巨大な水がめ「富士山」の厳選おすすめ水スポット 溶岩に染み込んだ水がもたらす恵みと絶景

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富士山の湧き水には、玄武岩質由来のバナジウムが多く含まれていて、健康や美容に効果があると期待されているそうです。湧き水は富士山周辺の寺社や道の駅などで、ボトルを持参すれば汲める場所が点在しています。

写真の湧玉池は、富士宮市の富士山本宮浅間大社の傍らにあり、かつては富士山に信仰登山する人たちが登山を前に身を清めた場所として知られていますが、その清らかな水は飲用水として、今でも親しまれています。

湧き水は飲料用や産業業に利用される(写真:筆者撮影)

飲んでもおいしい富士山の湧き水ですが、さまざまな産業にも利用されています。静岡県側の富士宮市では、富士山の湧き水を利用して仕込む日本酒や、豊富な水を利用したマスの生産などが盛んに行われています。また、水を多用する機械部品や製紙業などの工場も多く立地するなど、富士山の水は、飲用以外の用途でも利用され、地域経済の基盤を支える貴重な資源として活用されています。富士山麓にお出かけの際には、ぜひ富士山の水が生み出す恵みにも触れて、その恩恵を体感してみてください。

富士山付近では水を利用したマスの生産も盛ん(写真:筆者撮影)

登山の雨には要注意

ここまで富士山の豊かな水資源について書いてきましたが、最後に、登山中の荒天に見舞われた際に注意すべき点にも触れておきます。

登山中に降雨になる状況では、さまざまなリスクが懸念されます。大前提として事前に気象情報をしっかりと収集し、天候不順の度合いを予測し、予定している山行を実施するべきかを正しく判断することが重要です。

実際の山で雨に降られた場合のリスクとしては、体が濡れることによる低体温症のリスクが挙げられます。登山に行かれる際には、透湿性に優れた素材を使った雨具を持参することで、身体を濡らさないように対策しましょう。万が一濡れた際に備えて、インナーや靴下などの予備を、ジップロックなどに入れてザックに忍ばせておくこともおすすめします。

雨で視界が悪い富士山の山頂(写真:筆者撮影)

突風を伴う場合には転倒・滑落などのリスクにも注意が必要です。濃霧が発生すると、道迷いのリスクが高まりますので、事前のルートの確認はもちろんのこと、地形図やコンパス、GPSなどを持参しましょう。また、雷が発生する場合には、山頂、稜線や突出した岩、高木を避け、山小屋などに速やかに避難する必要があります。

もうすぐ本格的な夏山シーズンですが、気象リスクにしっかりと備えて、安全な登山を楽しんでください。

馬場 龍一 エコツアーガイド

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ばば りゅういち

東京都出身。早稲田大学大学院でエコツーリズムを専攻。その後、環境関係のコンサルタント会社勤務を経て、自然にかかわる仕事への思いを捨てきれず、脱サラ。生物や自然環境について学ぶため、東京環境工科専門学校に入学し、生き物や環境保全について造詣を深め、卒業後に静岡県へと移住。富士山のガイドや西伊豆の海でのダイビングガイドとして活動。2021年にエコツアーガイド『LINKs』を立ち上げ独立。富士山山頂登山のみならず、5合目以下で登らずに楽しめる富士山のツアーを幅広く開催している。

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