「マンピーのG★SPOT」芥川龍之介が出てくる痛快 「洋楽の肉体性への欲求」とデタラメ言葉の遊び心

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1995年に発売された「マンピーのG★SPOT」のCDジャケット
「胸さわぎの腰つき」の衝撃から44年。以来ずっと桑田佳祐は自由に曲を書き、歌ってきた。サザンとソロの全作品のうち、26作の歌詞を徹底分析したスージー鈴木氏の新著『桑田佳祐論』から一部抜粋、再構成してお届けする。(文中敬称略)
サザンオールスターズ《マンピーのG★SPOT》
作詞:桑田佳祐、作曲:桑田佳祐、編曲:サザンオールスターズ
シングル、1995年5月22日

「マンピーのG★SPOT」

1月に阪神・淡路大震災、3月に地下鉄サリン事件という、激動の年――1995年5月に発売されたこの曲は、そんな年だったことなど、まったく感じさせない能天気な曲であり、現在でもコンサートの定番となっている人気曲である。《真夜中のダンディー》(71万枚)ほどではないが、こちらも50万枚を売り上げる大ヒットとなった。

それにしても「マンピーのG★SPOT」である。このエロティックな文字列を前に、評論への意欲は萎えてしまう。「マンピー」である。「G SPOT」である。さらには「G」と「SPOT」の間に「★」なのだから。

しかし、気持ちを奮い立たせて、この文字列と向き合ってみる。まず指摘するべきは、こんなタイトルの曲を歌う音楽家は、極めて稀だということだ。少なくとも、日本ロック/ポップス史のビッグネームの中では皆無だろう。

松任谷由実や山下達郎、佐野元春、矢沢永吉、浜田省吾……が「マンピーのG★SPOT」のようなタイトルの曲など決して歌わないだろう。カバーすらしないはずだ。忌野清志郎だったら、少しの可能性はあるかもしれないが、それでも、そこそこの違和感が残ると思う。

言い換えれば、このようなタイトルの曲を作り/歌う(作れる/歌える)ということが、桑田佳祐にとって、他の音楽家に対する強烈な差別化となっているということである。やや大げさに言えば、こういう曲を作り/歌ってきたからこそ、桑田佳祐は、日本ロック史における最大の存在になれたのである。

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