厳しい海運業界、日本の強みが招いた"誤算" 商船三井は今期業績予想を大幅下方修正

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もっとも、ほかの2社も安穏とはしていられない。今期は円安と燃料油安という追い風に助けられた面があるからだ。経常利益に与えるプラス効果は、第3四半期(2014年4~12月期)に合計で、日本郵船は114億円、川崎汽船は88億円、商船三井は161億円に及んだ。今後はそうした恩恵は縮小せざるをえない。

一方、世界はすでに先を行っている。デンマークのAPモラー・マースクグループ傘下のコンテナ船世界首位マースクラインは、2011年に赤字に陥った後、大型船の先行投入による効率化と不採算航路からの撤退を加速。日本勢がコンテナ船事業は、なお収支均衡ライン前後でウロウロしているのを尻目に、急速に収益を改善させている。

 強みのはずの総合力があだに?

現在の世界シェアは15%。商船三井、日本郵船の3%、川崎汽船の2%を圧倒し、2014年末には日本に、日本勢より8割積載能力が高い超大型船を就航させた。そしてこの超大型船を他地域にも就航させる計画を、着々と進めている。

業界構造を振り返れば、船舶過剰感が残る中、大荷主である資源・穀物メジャーは寡占化を通じ、発言力を強めている。マースクラインの規模拡大は、こうした市場で生き残るための答えの一つだ。

2016年3月期はバラ積み船に加え、コンテナ船も新大型船の竣工が相次ぎ、需給は緩む懸念が強い。従来、日本勢はコンテナ船、バラ積み船、自動車船、タンカーなど、あらゆる顧客ニーズに応える総合力を強みとしてきた。が、それは経営資源が分散化し、全体で低収益を強いられる“総花”の危険と隣合わせだ。

日本勢が、新たな柱として期待を寄せる液化天然ガス(LNG)輸送船や、海洋開発事業などのエネルギー分野は、原油安を受け不透明感を増している。従来の経営スタイルからの脱却を急がなければ、世界との差はさらに広がることになる。

岡本 享 東洋経済 記者

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おかもと とおる / Tohru Okamoto

一橋大学社会学部卒。機械、電機、保険、海運業界などのほかマーケットを担当。2013~2015年『会社四季報プロ500』編集長、2016年「決定版 人工知能超入門」編集長、2018~2019年『会社四季報』編集長。大学時代に留学したブラジル再訪の機会をうかがう。

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