南果歩さん「重度のうつから再生して見えた景色」 離婚、がん闘病を経て見えた「神様のシナリオ」

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最大の幸せは人生の最後に訪れると信じて

「私はつねに今がいちばん楽しみなんです。だから、最近は舞台のことだけを考えていますね」

出演中の舞台「パンドラの鐘」(演出・杉原邦生)は、1999年に故・蜷川幸雄氏の依頼で野田秀樹氏が書き下ろした戯曲。かつては、2人が演出したバージョンが同時期に上演され、大きな話題を呼んだ作品だ。今回も豪華な俳優陣と気鋭の演出家が足並みを揃えての再演とあって、連日、盛り上がりを見せている。

「お仕事も出会いはタイミングですよね。野田さんの作品はずっと観る側でしたけど、今こそ、演じてみたいと思えました。演出家の杉原さんや共演者の皆さん、素晴らしい方とご一緒できることもワクワクしていて。いつもそうなんですが、お稽古が始まったら、他のことは考えずに、仕事に専念します。舞台がすべての毎日になるんです」

今年の秋にも新たな舞台が控えている。海外ドラマ「Pachinko パチンコ」もシーズン2が決まった。最近の南さんは、今が盛りの花のようにエネルギッシュに咲き誇っている。

「素晴らしい仕事に恵まれ、ますます活躍していますねと言っていただきますけど、それは、私が身軽になったからだと思います。何かを手放さなければ新しいものは手に入らない。ひとり身に戻っていなければ、海外ドラマにもチャレンジできなかったかもしれません」

20代の頃から世界中を旅することが好きな南さんは、人生もまた旅だと感じている。

乙女オバさん
南さんの近著『乙女オバさん』(小学館)。
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「人生は自分だけのものだし、1人旅ですよね。各々1つの道しか通れないし、その道でしか見られない景色があると思う。だからね、結婚も出産も離婚も、社会から強要されるなんてナンセンス。どんな風に生きようが、上も下もない。自分が歩みたい道を歩めばいいですよ。私は命の限り、たくさんの景色が見たい。この先も美しい風景が見たいんです」

転がる石に苔はつかないというけれど、雨風を避けない花は年々、根を太くして枯れることを知らない。

「予想外のことも大変なこともあるけど、神様のシナリオに抗わず一途に歩いていたら、みんな最後は人生でいちばん幸せになれるんじゃないかな。『いろんなことがあったのは、この場所でこの景色を見るためだった!』と旅の終わりにそう思える景色が待っていると信じています」

前回記事:自身を「乙女オバさん」と呼ぶ南果歩さんの真意
芳麗 文筆家、インタビュアー

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よしれい / Yoshirei

NHK山形放送局のキャスター業を経て文筆業に。女性の生き方をメインテーマに、雑誌、書籍、Webなど数多くの媒体で執筆。人物を掘り下げたロングインタビューを数多く手がけるほか、恋と愛、生活、カルチャーなどにまつわるコラムも好評。著書に『3000人にインタビューして気づいた! 相手も自分も気持ちよくなる秘訣』(すばる舎)、『ラブ・リノベーション』(主婦の友社)など。音声番組Voicy「芳麗の女と文化の話café」では、本連載に登場した方々とのリラックストークも。日々の生活や取材活動から、生きづらい時代を“幸せに生きるヒント”を多面的に探究して発信中。HPはこちら

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