今年、世界同時配信されたドラマ「Pachinko パチンコ」では、自らオーディションを受けて役をつかみ取り、世界的スターとともにメインキャストの1人を演じた。
「57歳の大冒険でした(笑)。原作の大ファンだったから、オーディションの話を聞いた瞬間、絶対、チャレンジしようと。経験上、チャンスは、そう巡ってこないものだということはわかっていましたから」
一瞬、言葉を探して続ける。
「でもね、私がいちばんよい俳優だったから選ばれたとは思ってないんです。どんな作品でも、それぞれの役の席は1つだけ。でもね、椅子とりゲームではないんですよ。
その役柄と自分が引き合うか。作品はもちろん、監督や共演者と相性が良くて縁があるかどうがすべてです。その場でいちばん能力や魅力がある人間が役をつかみとれるわけじゃない。まあ、そう考えないと、この仕事はやっていられないですよね(笑)」
俳優は自身の肉体と魂を役柄に明け渡して役を演じる。だからこそ、他の誰とも替えがきかない唯一無二の存在であることが求められるし、その自分を見初めてくれる人や引き合う作品に出会えることを信じるしかない。
それは、おそらく、多くの他の職種にも通じる部分があるはずだ。さらには、多くの人間関係にも言えることではないか。本質的には変えようのない自分と誰かが、引き合うか、引き合わないか。
「だから挑戦も努力も怠らないけど、その先は神様のいう通りに従います(笑)」
2021年1月20日、彼女は自身の誕生日の夜に羽田空港から飛び立った。単身でカナダに渡ってドラマ「Pachinko パチンコ」の撮影に挑むためだ。キャリアは30年超、日本ではベテランと呼ばれる存在であるにもかかわらず、まったく新しい世界へ飛び込む怖さはなかったのか。
「少しは怖かったけど、楽しいと嬉しいがはるかに勝りましたね。現場には日本語を話せるスタッフもいなかったし、意志の疎通では大変なことも多々ありました。でも、日々、お芝居することで信頼関係は育っていったし、何より素晴らしい出会いがたくさんあったんです。敏腕プロデューサーの女性や韓国の国民的俳優、ユン・ヨジョンさんとご一緒できた経験は、宝物ですよ」
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