芸能人用「こころの119」開設に至った哀しい背景 深刻な悩みを相談しにくい芸能人に救いの手

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協会の役割は安心して芸能活動ができる環境づくりを推進することだ。ケガだけではなく衛生・安全対策やメンタルケアも含まれる。これらは芸能界ではまだ不十分だと感じている。

たとえばトイレの問題。建設現場や屋外大規模イベントなどで、その場で簡単に設置できるポータブルトイレを目にした方もおられるだろう。ただ芸能界の撮影現場ではそうしたポータブルトイレは設置されないことが多く、公衆トイレを使用することになる。

日本芸能従事者協会が実施したアンケート(318回答)では「現場にトイレがないことがある」90.2%、「(トイレが遠く我慢していたため)膀胱炎になったことがある」26.3%という調査結果になった。ちなみに私はウェディングドレス姿で公衆トイレを利用せざるをえなかった経験がある。

更衣室がない状況で着替えることも

更衣室も不備なことが多い。先ほどのアンケートの調査結果では「仕事場に更衣室がないことがある」80.6%となった。「ドラマ撮影現場で、男性がいる場で着替えさせられた」という声も寄せられた。

性被害の問題もある。近年、アメリカを発端に「Me Too」運動が広がったことは記憶に新しい。ただ個人的な見解として被害者個人が表に出て戦うのは、潰されるリスクがあるので控えたほうがいいと思っている。それよりは制度として対処したほうがいい。協会もそのために役立ちたいと思う。

是枝裕和氏、諏訪敦彦氏、岨手由貴子氏、西川美和氏、深田晃司氏、舩橋淳氏らが名を連ねる「映画監督有志の会」が、今年4月、ハラスメント防止に向けての提言書を提出された。監督は映画産業のヒエラルキーの頂点にいる。そうした立場にいる方々が、自ら声を上げてくださったのは有り難いことだ。

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