「階級意識がやたら強いのに合議」日本企業のナゾ 日本的な組織を変革するための3のアプローチ
このような特性がある「日本的な組織」ですが、組織変革に際してよく用いられるキーワードがあります。
例えば、「コンセンサス重視」「上への忖度(そんたく)」「横並び意識」などです。こうした要素は、程度の差こそあれ各組織に一定に共通して見られる傾向です。これらは、ハイコンテクストなカルチャーの文脈の中で、階層意識と合意形成の意識が高いという「日本的な組織」の特性と言えます。
こうした特性は、最近ではグローバル化やデジタル化などの劇的な環境変化に適応できない課題として指摘されることが多いですが、必ずしも短所ばかりではありません。これからは、歴史や文化的な背景に根差した日本的な組織特性を踏まえたうえで、この先の環境変化に前向きに適応できる、将来志向で“日本らしい”変革のあり方を見いだしてゆく必要があります。
「日本的な組織」を変える3つの工夫
私が考える“日本らしい”変革のアプローチにおいて、工夫すべきポイントは3つあります。それは、①リーダーシップ機能の強化、②ハードとソフトの両面からの仕組みづくり、③横からの変革です。それぞれを見てゆきましょう。
まず、組織のトップの力を強めることは変革を成し遂げるうえで重要なポイントです。
日本的な組織では、リーダーがその立場になっても、合意形成を重んじるがゆえに、過去の上下関係や権威に縛られて、実態としてリーダーシップが発揮できないケースも目立ちます。
例えば、いざ社長になったとしても、責任権限が明確でないことに加えて、相談役などの諸先輩や現場を掌握する役員間でのしがらみが強く、フリーハンドで思い切った判断が出来ない事例などが散見されます。
「日本的な組織」は、コンセンサス重視が全体に浸透し、現場から中間管理層、そして経営層という重層的かつボトムアップに意思決定を仰ぐというスタイルが一般的です。
トップは現場の情報を掌握することに限界があり、実質的に現場を動かせる力を持っていないこともよく見受けられます。仮にトップが決定をしても、現場へ意思を伝達するプロセスの中で正しい情報が歪められるリスクもあります。
これらの課題を解決するには、組織内の各レベルにおける意思決定のルール、権限と責任を明確にするリーダーシップ機能の設計が必要不可欠です。実務的には、組織や会議体の責任権限などの方針や規程を見直すこと、その運用の順守に責任を持つガバナンスを強化することが必要です。
「誰が何を決めることができるのか」、さらにそこでの「決め方のルール」を明確にすることで、全体の責任・権限がより透明化されてゆきます。こうしたリーダーシップ機能を実質的に高める組織設計が、変革を頓挫させず最後まで進めるうえで要になります。
グローバル化やデジタル化の環境下で、「日本的な組織」がスピーディーに変革を遂げるには、実質的な責任と権限を明確にする組織設計がポイントです。そして、さらには一定のコンセンサスを求めつつ反対意見を議論で説得し、意思決定に導けるリーダーの出現が不可欠です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら