「階級意識がやたら強いのに合議」日本企業のナゾ 日本的な組織を変革するための3のアプローチ

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② ハードとソフトの両面からの仕組みづくり

2つ目の仕組みづくりにおいては、「ハード」と「ソフト」の生かし方の工夫が重要です。ここでいう「ハード」とは、即物化しやすく目に見えるものを意味し、「ソフト」とは人の内面的要素に起因し、目に見えづらい対象を意味します。

一般的には、「ハードが変わるとソフトがおのずと変わってゆく」という傾向があり、「日本的な組織」の変革においては、この点に着目することが有効です。

具体的には、ハードの領域には、戦略、組織構造、人事制度、各種ルール、システムなど、目に見える仕組みが該当し「マネジメントシステム」と呼ばれます。とりわけハードの中でも、“組織構造”や“人事評価制度”は、個人の行動変容に最も影響力を与える仕組みです。

「日本的な組織」においては、集団内で自分が相対的にどう評価されているのかへの関心は高く、組織や人事評価がどう変わるかは、変革を推し進めるうえで強力なメッセージになるのです。

一方で、ソフトの領域については、目に見えないもの、企業風土、行動様式、商慣習など、人間の内面に起因した無形の要素が該当します。これらは人の価値観に根差した無形なものであるため、変革するには多くのコミュニケーションと相応の時間を要します。しかしながら、企業風土といったソフトが変わらないと組織変革は定着しないので、極めて重要な要素です。

「日本的な組織」の変革には、まずは目に見えるハード(組織構造や人事評価制度等)から変えることを皮切りに、意識や価値観などソフトを変えるためのコミュニケーションを継続する、といった効果的な進め方を工夫することが大切です。

横並び意識を活用!?

③ 横からの変革

3つ目の工夫として、“横並び意識”を活用する方法があります。

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多くの「日本的な組織」では、同じ部署や同期などといった組織内の“横のつながり”への意識が高い傾向があります。横並びという言葉が象徴するように、自分にとって身近な「横」が変わり始めたときに、全体への変革の鼓動は大きくなる、というポイントに注視することが重要です。

まず、「横からの変革」を起こすためには、旗頭としてのリーダーと、各所から旗手になりうる人材を広く集結させる必要があります。変革意欲が高いメンバー同士で変革チームを作ることから始め、組織のトップとメンバー同士の“横のつながり”を結びつける体制づくりが重要です。

トップがビジョンや方針を示し、共感するメンバー同士が横で連携することによって、変革の流れを組織全体に広げる経路ができるのです。いざ変革を進める過程では、旗手となるメンバーが起点になって、周囲に情報を発信し巻き込む動きも求められます。

暗黙知のコミュニケーションの比重が高く、ハイコンテクストカルチャーの「日本的な組織」においては、“周囲の動きや空気を察知して”組織が動くことが特徴です。

“横並び意識”が強い組織ほど、自分の“横”にいるメンバーの動きに対して敏感であり、変革チームが周囲をオープンに巻き込む能動的な動きにしてゆくことで、変革の流れはおのずと組織全体に広まることになるのです。

松江 英夫 デロイト トーマツ グループ執行役

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まつえ ひでお / Hideo Matsue

1971年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。デロイト トーマツ グループ執行役。中央大学ビジネススクール、事業構想大学院大学客員教授。経済同友会幹事、政府の研究会委員、テレビの報道番組コメンテーター等、産学官メディアで豊富な経験を持つ。経営戦略、組織変革を専門とし、著書に『自己変革の経営戦略』などがある。

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