同級生の前で「残してごめんなさい」心の傷に… 教師の完食指導で「会食恐怖症」になる子ども達

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中学に上がり、給食から弁当に変わったときは、心から安心したものだった。あれから30年近くが経つが、減っているとはいえ、いまだに過剰な完食教育が残っている現状を思い知らされた。

原因として、適切な給食指導がなかなか浸透していない、教員が個人の経験に基づいた指導をしがち、といったことが浮き彫りになったが、おそらくそれだけではないだろう。

2020年、ある自治体に市民から寄せられた「学校でハラール給食を提供してほしい」という要望に、市の回答は「給食センターは大量調理のための施設で、ハラールなど宗教文化、多種類のアレルゲンへの対応などすべてに応えるのは難しい」だった。

40人もの生徒に対応するのは無理がある

同様に、少人数学級が実現できていない今、1人の担任が40人もの生徒のことを把握し、個別に対応するのは非現実的なのではないか。ただでさえ、教員はサービス残業が常態化していると指摘される業種なのである。

人的・金銭的コストの観点からも、どこまで個の要望に応えるべきか、また応えられるのか、判断は難しいだろう。多文化、多様性の共生を実現するための、リソースをどう準備すべきか。どのような仕組みやオペレーションを構築するか、現場だけでなく一般の人々も参画し、より慎重に考えていく必要があるように思った。

(ジャーナリスト・肥沼和之)

【筆者プロフィール】 
肥沼和之:1980年東京都生まれ。ジャーナリスト。人物ルポや社会問題のほか、歌舞伎町や夜の酒場を舞台にしたルポルタージュなどを手掛ける。東京・新宿ゴールデン街のプチ文壇バー「月に吠える」のマスターという顔ももつ。

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