同級生の前で「残してごめんなさい」心の傷に… 教師の完食指導で「会食恐怖症」になる子ども達
学校に対しては、基本的には担任の先生に、子どもが苦しんでいることを伝えましょう。そのときの注意点として、口頭のみでの説明は避けます。「子どもを甘やかしている」と捉えられ、うまく伝わらないことがあるからです。
そのため、「過剰な完食指導で、不登校や会食恐怖症になる恐れがある」という報道記事や文科省の手引き、きゅうけんの資料などをプリントアウトし、見せながら伝えるとよいです。教頭や校長に伝えて注意を促してもらう、教育委員会に相談する、などの方法もありますが、基本的には担任と話し合えば、見直してくれるケースが多いです。若手教員が先輩から過剰な完食指導を進められた場合も、同じように対応するのがお勧めです。
──まだまだ広まっていない適切な給食指導を、どのように啓もうしていくべきでしょう?
私たちがきゅうけんを立ち上げたのは、給食指導の情報が行き届いていない問題を解決するためです。実際に学校や保育園や教育委員会などで、どのように情報を得ればいいかわからない、という教員や保護者がたくさんいました。
そこできゅうけんでは、給食指導のポイントを、イラストや図をつけてわかりやすい資料にし、毎月発行しています。多くの方がプリントアウトし、共有したり勉強に使ったりしてくれているようです。
──子どもの健康や成長を考えると、完食してほしい気持ちは、親や教師にはどうしてもあると思いますが、折り合いはどうつけるべきだと思いますか?
栄養面では、年齢ごとに身長・体重の推移をグラフにした「成長曲線」で判断すべきです(※)。身長と体重がその子のペースで伸びていれば、基本的には問題ありません。同時に子どもの様子をよく見て、元気そうであれば、栄養失調の心配はないといえるでしょう。
ただ、教員や保護者が「残さず食べてほしい」と思う気持ちは自然です。大事なのは、子どもが嫌いなものを克服するには時間がかかると認識し、焦らずに向き合うこと。食に限りませんが、子どもが前に進むためには、まずは「楽しい」という感情が必要です。
楽しければ率先して練習して、上達もするのです。逆に怒られると楽しくなくなり、やらされてる感が生じます。すると、前には進めません。まずは子どもが安心できる環境をつくり、「楽しい」と思える食事の時間を大事にしてほしいですね。
(※詳しくは「一般社団法人 日本小児内分泌学会」を参照ください)
完食指導の背景に少人数学級が実現していない
取材をしながら、小学校のころを思い出した。当時ひどい偏食だった筆者は、よく給食を残し、そのたびに給食当番に謝らされた。残すことを認めてもらえず、昼休みでみんなが遊びに出ているのに、食べかけの給食とひとり向き合っていたこともある。