源平の戦局変えた「源義経の凄い奇襲」意外な真相 平家を大混乱に陥れた「鵯越の逆落とし」

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2月7日、源氏と平家の戦いの火ぶたが切られることになるが、大手口では源範頼(源義経の異母兄)の軍勢が生田を防衛する平家軍を攻撃。搦手(からめて、陣地などの後ろ側)では、熊谷直実と平山季重が一番駆けを競い、平家の軍勢に攻めかかる。

だが、兵力に勝り、地の利ある平家の守りは固い。

「人の仕業とは見えず、ただ鬼神の所為」

そのころ、義経は鵯越から平家の城郭を見下ろしていた。馬をその難所から駆け下りさせて見たら、ある馬は足を折り、転げ落ち、もう1頭の馬は無事に下りていく。それを見た義経は「乗り手が注意すれば、馬は傷付くことはあるまい。さぁ、駆け下りるのだ。この義経を手本とせよ」と叫び、先頭きって、崖を下っていった。

それに勇気付けられたか、ほかの将兵も続々と下りていく。勇猛な武者であっても「あまりの恐ろしさに目をふさいで駆け下った」という。『平家物語』はそれを「人の仕業とは見えず、ただ鬼神の所為」と記す。

村上基国の率いる軍兵が平家の屋形、仮屋に火を放ったこともあり、平家の軍勢は海や用意していた船に駆け入った。

「膠着状態だった戦況は、義経軍の奇襲により、源氏の優勢となり、一ノ谷の戦いは瞬く間に源氏方の勝利となった」というのが、『平家物語』を基にした一般的な見解である。

ところが『玉葉』という当時の貴族の日記を中心に考えてみたら、また別の側面が浮かび上がってくる。『玉葉』の2月8日条には、九条兼実が藤原定能から得た一ノ谷合戦の情報が記されている。

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