43日間マグロ漁船に乗った男が悟った「4つの真理」 "極限状態"を乗り切る知恵がそこにはあった

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一方的に情報を得ようとする船には、似た者同士で集まって、お互いが知っている情報は伏せながらマグロが捕れない文句を言っているという。情報交換を避ける船には、誰もその船に情報を教えなくなる。うその情報を流して自分たちだけが利を得ようとする船は、一時的には売り上げが上がるかもしれないが、長期的にみると以後情報をもらえなくなるため売り上げが減っていく。

一方、情報交換をする船は、皆が同じ場所で漁をするため、飛びぬけてどこか1隻だけ大漁になることはないが、まったくマグロが捕れないリスクは避けられる。そのため、情報共有をしない船よりは売り上げがいい傾向にあるそうだ。

マグロの群れは、同じ速さで泳ぐ者同士が群れを作って泳ぐという。似た者同士で仲良くするのは人間もマグロも同様。私たちは、どの仲間に入りたいだろうか。

43日間の航海から生き方を学んだ

マグロ漁業が盛んだったのは昭和40年代くらいまで。以前は、漁師が1カ月100万程も稼げた時代もあったようだが、今では一般の船員で月収30万程度だという。

理由は捕れるマグロの数自体が減ったこと。横行する違法操業を含め、海外から入ってくる安いマグロに対抗するために、価格をあげることが難しくなったこともあるという。

今ではマグロ漁船も激減。漁師の採用も長期間の航海のトラブル回避のため、知り合いから採用するケースが多いそうだ。

齊藤さんは、マグロ漁船を降りた後、もともと上司から与えられていたミッションである鮮度保持剤の開発に成功。その後会社を退社し、会議を運営するコンサルタントとして活躍している。

当初はマグロ漁船に対してネガティブなイメージしかなかったという齊藤さん。しかし、43日間の航海を経て、齊藤さんの思考は大きく変わった。

相手に対する想像力。相手が今どんな状況で、こちらはそれをどう受け止めるのか。相手への敬意、感謝は伝えているか。組織として1人ひとりの居場所を作れているか。そして、自分自身が置かれている状況を把握する冷静さ。齊藤さんの経験からコミュニケーションや生き方を学べることは少なくない。

松永 怜 ライター

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まつなが れい / Rei Matsunaga

東京生まれ。千葉育ち。理学療法士として医療現場で10数年以上働いたのち、フリーライターとして活動。WEBメディアを中心に、医療、ライフスタイル、恋愛婚活、エンタメ記事を執筆。 好きな場所は甲子園と神宮球場。地方大会から高校野球の応援に行くことも。そのほかライブ鑑賞、アクリル画を描くことが好き。

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