43日間マグロ漁船に乗った男が悟った「4つの真理」 "極限状態"を乗り切る知恵がそこにはあった

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① お互いを褒めあう文化があった

若手からベテランまで乗り込んでいるマグロ漁船。若手漁師は、捕ったマグロの処理が遅く、周りのスピードから遅れることもある。また、漁師たちの間で人間関係の構築ができていない場合もあるだろう。

齊藤正明さん(写真:齊藤さん提供)

そうした中、若手は、先輩がマグロを捕る最中、先輩にタバコをくわえさせて火をつけたり、ジュースの缶を配ったり、滑りやすい甲板を拭いたりしていた。その様子を齊藤さんが見ていて、若手は若手なりに、自分ができることをしているようだと感じた。するとベテランが、「あいつらが一生懸命やりよるから、おいどーらも頑張ろう!」と感謝を口にする。

ベテランが若手を褒める際には特徴もあった。「上から目線では褒めない」「あなたのおかげで助かっている」といった、相手を尊重する気持ちが外から見ても伝わった。

また、ただ「優しい」と曖昧に褒めるのではなく、「あのときの、あの対応がよかった」など具体的に行動を褒める。曖昧に伝えてしまうと、「自分は配慮されている、気を遣われている」と思われてしまう可能性もあるという。

船内にはお互いを褒めあう文化があったが、もし、「褒めるところが見つからない」「相手の欠点ばかり目に入ってしまう……」と感じてしまう人もいるだろうか。

船長曰(いわ)く、「たとえば“仕事ができる丁寧なやつ”は、たいてい“仕事が遅い”。これを長所と受け止めるのか、短所にするか。人の仕事を見て、できないことを指摘するのは誰でもできる。それなら、長所を見たほうがお互いにとっていい。また、昨日までできなかったことが今日できるようになったのは、毎日その人を見てるおいどーにしかできねぇ」と。

疲れているときほど、意識したい言葉だ。

一人一芸、各々の居場所を作り、過度な孤独を避ける

② 1人ひとりの居場所がある

さらに船長は、あえて若手ができそうな仕事をふっていた。たとえば高いところに登れる若手なら「お前、この船でいちばん高いところに登ってるど!」と褒めて自信を持たせる。または、ベテランで魚をさばくのが上手な人がいれば「お前、さばくのうまいよ! みんなにお前のやり方教えてやってくれ」と自己肯定感が高まるように声をかける。

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