電子制御は完全「シロ」 北米に復活託すトヨタ

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一時は1700万台を超えていた米国の新車市場は、09年には1043万台に激減。10年に1158万台まで戻ったが、回復ペースは遅い。

品質問題で動揺するトヨタの顧客に、米ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーター、韓国・現代自動車は、容赦なく攻め込んだ。トヨタもインセンティブの積み増しで応戦したが、08年3月期に295万台あった北米での販売は、今期209万台にとどまる。今年半ばには「カムリ」のモデルチェンジ、「プリウス」の新型ミニバンを投入し、失地回復を図るが、品質問題での教訓を生かし、米国の顧客をどれだけ呼び戻せるかが注目される。

台数で中国に抜かれたとはいえ、米国は金額ベースでは依然、世界最大の市場だ。トヨタの北米地域を統括する新美篤志副社長は「保有台数から考えて米新車市場が現状のままのはずがない」と見る。

トヨタが国内生産320万台体制の堅持をうたう背景には、米国市場の回復に合わせ、ハイブリッド車や「レクサス」など高級車の対米輸出が増える、との読みがある。並行してハイブリッド車の基幹部品などを内製化していくことで、単体の収益力を高めていく構えだ。さらに国内での生産効率化を進めることで、「1ドル=85円が続いても、12年3月期の終わりには、単月で営業黒字を実現したい」(新美副社長)。

豊田章男社長は10年2月に出席した公聴会からの激動の日々を振り返り、「この1年はやりたい仕事ができなかった。今年は前向きにいきたい」と吐露した。トヨタはこの4月、20年までの経営ビジョンを発表する。取締役の大幅減など経営体制の刷新も打ち出す見通しだ。トヨタはかつての「強さ」を取り戻せるか。復活に向けた覚悟とスピード感が問われている。

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(撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済2011年2月26日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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