ってことで、私は買い物に際し、買うモノだけでなく店も厳選するようになった。
するとこの2つの行動は手に手をとってダンスを始め、私はどんどん「買わない人」になっていったのだ。何しろ、言うてなんだがいつも同じおっちゃんが待っていてくれるような小さな店って、品揃えはまったく完璧ではない。小洒落た流行りの調味料なんて当然置いてないわけですよ。
となると、そもそも買うことに慎重になっていることに加え、その厳選した「買いたいもの」も、いざ買おうとすれば目当ての店には置いてないってことになり、ならばネットとかスーパーとかで買ったっていいわけですが、いったんこういうことを始めてしまうと笑顔もなくただお金を吸い取られることがどうにも「損してる」感が日に日に高まってきて、結局、近所の小さな店で手に入るものだけでなんとか生活を成り立たせるようになった。
例えば今買う調味料といえば、塩のみである。
……いやこんな人間、現代日本において私以外にはたして一人でもいるのか? とわれながら思わざるをえない厳選ぶりである。で、これが一般家庭にある山のような調味料類と比べていかに少ないかを想像していただければ、私がいかにお金を使わなくなったかが理解していただけるのではないだろうか。
自分の中で「おトク」の意味が変わった
この一連のことを言い換えるとですね、私は「おトク」という言葉の意味するものを、自分の中でガラリと変えたのだ。
一般的には「おトク」といえば無論、お金のことである。お金が節約できることである。当然、私も長い間そうと信じて疑わずに生きてきた。
でも今の私にとって「おトク」とは「もれなく人間関係がくっついてくること」を指すようになったのである。
買い物をするというただそれだけで、店の人、あるいは生産者とつながれる、つまりは友達が増える。それが私にとってのおトクであり、そうでないものを買うのは、つまりは何かを買ってもやってくるのは品物だけで、友達がついてこないとなると「めちゃくちゃ損してるじゃん!」と思わずにはいられないのである。
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