「出世を目指さない人」の仕事人生はこう変わる 「Web3」で組織に縛られない世界がやってくる
もちろんDAOでも、有望そうなDAOに早々に目をつけたベンチャー・キャピタルが、そのDAOのトークンを大量に保有する、といったことが起こる可能性はあります。ただし「投資家優位という構造はない」「労働者は存在しない(主体的に働く個人がいるだけ)」というのが、DAOのそもそものアイデンティティーの1つであることから、ある種の自浄作用が働くはずです。また、誰がどれだけのトークンを所有しているかはブロックチェーンで丸見えなので、検証も容易です。
実際、僕らのコミュニティー「Henkaku」でも、「トークンホルダーの比率はどれくらいがフェアか」「ユーザーの保有率が5%以下だとアンフェアではないか」という議論はよく交わされます。いわば草の根的に、新たなガバナンスの倫理観が育まれていると感じます。
長らく資本主義社会の課題であった構造的不平等は、テクノロジーの進化によって、いま、一気に解決に向かっているところなのかもしれません。クリプトエコノミーならば、たとえば不平等を是正する「富の再分配」を行うようなスマートコントラクトを取引に埋め込むことも可能です。DAOが従来のガバナンスのかたちを根底から変えている様子を見ていると、あながち外れていない未来予測に思えます。
クリプトエコノミーは何かと懐疑的な目を向けられがちですが、事業(プロジェクト)の透明性しかり、ガバナンスのフェアネスしかり、むしろフィアットエコノミーの上場企業のコンプライアンス以上のものが構築される兆しが見えているのです。
DAO特有の難点
課題がないわけではありません。たとえば、あるDAOで「『ヒトラー』という言葉をアイテムのネーミングに使ってはいけない」という議決を取った際、決議に必要な数の賛同が得られなかったという記事を読んだことがあります。
つまり、常識的な倫理観に照らせば明らかなことですら、容易に議決できなくなる。これは、すべての人に投票権が与えられるがゆえに、あらゆる議論が相対化され、意思決定が鈍化しやすいというDAO特有の難点といえるでしょう。
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