「名画観察」で子どもの読解力と表現力が伸びる訳 正しい読解を邪魔する「思い込み」を解放する

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今でこそ、学校の名簿は男女混合のアイウエオ順ですが、ひと昔前までは男子が先、その後に女子、というのが当たり前でした。男女の役割分担など、小さい頃、家庭や学校生活の中で知らず知らずに刷り込まれた価値観は、大人になっても私たちの行動や考えを支配しますから、上のように「おばあさん」が先にくる文章を読むと、一瞬「えっ?」と戸惑い、読み間違えそうになりますよね。

ジェンダーの問題に限らず、私たちは実にさまざまな思い込みや先入観を持っていて、この主観が強すぎると、人の話を聞いたり、文章を読んだりした時、自分と価値観の違う人の言葉を、さっと受け入れることができません。この傾向は、社会経験の少ない子どもほど顕著で、「本当かな?」と疑ったりしている間に、授業がどんどん進み、よけいに理解できなくなってしまうのです。

自分の価値観で解釈すると誤読する

また、主観の強い子は、見聞きした物事を自分の価値観で解釈してしまうので、文章の意味内容を誤読することも多いのです。

先ほど挙げた例は、まさしくそのパターン。「アヒルの子どもはみんな可愛い」と強く思い込んでいる子は、まさか「みにくいアヒル」が「醜いアヒル」を意味しているとは思いません。瞬時に「見にくいアヒル」だと、自分の理解しやすいように解釈してしまうというわけです。

国語が苦手な子の頭の中では、このような誤解が頻繁に起きているのですから、国語のテストで良い点が取れるはずがありません。ですから、まずは子ども自身に「あなたのものの見方、解釈の仕方は、ちょっと違うんだ」ということに気づいてもらわなくてはいけません。でも、そんなことを小さい子どもに教え、理解してもらうのは、なかなか大変ですよね。

そこで、私の国語教室では、名画を使ってその子の思い込みや先入観をとる「絵画観察トレーニング」を授業に取り入れ、客観的な視点を養ってもらっています。

『国語の成績は観察力で必ず伸びる』153ページより

例えば、上の絵。ジュゼッペ・アルチンボルドの「オルトラーノ」という有名な作品ですが、この絵の観察作文を書かせると、最初はみんな次のようなことを書いてきます。

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