精神科医が警鐘「マスクを外すのが不安な人々」へ 脳や自律神経、肺などに問題が生じる可能性も

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私たちは、その口と目の微妙な動きから、作り笑いを見抜く能力を養ってきました。そうして、広い意味での生存戦略にも役立ててきたわけですが、マスクで口もとを隠されると、その能力を発揮できなくなります。

また、私たちは、相手のさまざまな気持ちの動きも、口もとの様子から読み取ってきました。

たとえば、相手の機嫌の良し悪しは、口の両端の角度に現れます。相手がこちらの話を聞いて、楽しく思っているときには、口角(口の両端)が上がり、つまらないと感じているときには下がります。私たちは、その口角の上下を見て、自分の話がウケているかどうかを確認していたのです。マスク姿の相手には、この能力も発揮できません。

また、鼻も、表情を読み取るのに重要な部位です。日本語には「鼻の穴をふくらませる」「小鼻をうごめかす」「鼻高々」など、「鼻」を使った慣用句が多数ありますが、それも、私たちが鼻の微妙な動きから感情を読み取ってきたことの証左といえます。マスクをつけると、その「鼻」も覆ってしまうことになるのです。

というように、私たちは、互いに表情を読み合うという技術を使って、円満な社会関係を築いてきたのですが、マスクをしていると、その技術を活用することができないのです。

相手の表情を読む力が確実に衰える

いうまでもないことですが、人間は1人では生きられません。孤島に流されたロビンソン・クルーソーだって、フライデーと表情を読み合っていたはずです。相手の表情を読む力は、社会を円滑に維持するためにも、重要な技術なのです。

今後さらにマスクをつける時代が続けば、日本人の表情を読む力は確実に衰えていくでしょう。それは、日本人のコミュニケーション能力を落とし、ひいては1人ひとりの感情状態を悪化させ、孤立を招きます。極端にいえば、「拡大自殺」のような犯罪の遠因にもなるとも考えられます。

では、そうした感情をどうコントロールするか。その制御法を紹介していきましょう。

とにかく、「怒り」という感情は、さまざまな感情のなかでも要注意です。それは、怒りが往々にして「攻撃行動を伴う」からです。「カッときて、暴力を振るい、社会的地位を失った」「カチンときて、余計なことを口にして、人間関係をおかしくした」といった事態を招きかねない、要注意の感情です。

私個人にとっても、「怒り」を制御することは、若い頃は切実な問題でした。自分自身が「怒りっぽい」ことを自覚していたので、「怒り」とどう付き合うかは、個人的にも重要な課題だったのです。

精神医学の知見からいっても、私の個人的経験からいっても、「怒り」をコントロールするには、「少しずつ発散する」のがベストです。

ただし、「怒り」の厄介なところは、相手かまわず、所かまわず発散するわけにいかないことです。怒りのままに、人に八つ当たりすると、人間関係にたちまちひびが入ってしまいます。

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