それでは、大切な人ががんになり、そしてがんが進行していったとき、家族はどうしたらよいでしょうか。
気持ちがすぐ楽になるような簡単な解決方法ではありませんが、少なくとも現実を否定することではなく、「正しく傷つく」ことからはじめる必要があります。
がんが治ってほしいということを願うとともに、「この人はいなくなってしまうかもしれない」という考えを押し込めるのではなく、不安や悲しみといった感情にふたをせずに考えて対応するのです。
必ずしも気持ちを保とうとしなくてもいい
私はよく患者さんやご家族から、「気持ちを保てなくなることが心配だけど、どうしたらよいか?」という質問をいただくことがあります。
それに対して、「受け入れがたいことが起きたとき、気持ちを保とうとしなくてもよいのです。怒りや悲しみ、不安などの感情も大切な役割があり、感情のおもむくままに過ごせば、心はどこかにたどり着くのです」とお答えします。
たとえば、怒りは自分を守るための感情ですし、悲しみは心の傷をいやす役割があります。これらの感情の助けを借りながら、大切な人との時間を大切に過ごすことで、一緒に精いっぱい生きたという感覚を持てるようになります。
そうすれば、"そのとき"が来たとしても最初はさみしさでいっぱいかもしれませんが、大切な人との想い出を胸に、再び新たな人生を歩みだすことができるのです。
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