33歳の私がMBA取得後わかったキャリアの作り方 ロンドンのキャリア女性が実践する質問と表現

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I helped launch a project with a 100,000 budget.
「10万ポンドの予算規模のプロジェクトの発足に携わった」

友達曰く、ここは「I helped launch」じゃなくて、単に「I launched」(発足させた)と書いたほうが強くてインパクトがある。helpというのは婉曲・謙譲表現だから自分の能力やパワーを甘く見せる。読み手は応募者がプロジェクトを全部1人で背負ったという意味じゃないことはわかったうえで判断する。だから、100パーセント事実かどうかをあまり気にしなくていい。大事なのは、自信を持って自分の実績を堂々と主張すること。

人は、へりくだる言い方(謙譲表現)をよく使う。そのこと自体は別に日本でもイギリスでも変わらない。だけど、ここで問題なのは、私の経験上、(日本ほどではないけどイギリスでも)女性のほうが圧倒的にこういう表現を使う、っていうこと。この「過剰なへりくだり」は、働く女性の能力に関する偏見の一因にもなっている。

人を動かせるリーダーたちの言葉

へりくだったり、自分の能力を自分で過小評価するような表現を英語で「Out of Power Language」という。例えば、上司に大事な仕事を与えられたときに「I will try to do my best」(頑張ってみます)と言うか、それとも──自分がやったことのない仕事でも──「I am confident that I can do this」(これができる自信を持っています)と強気で言うか、ってこと。

前者のほうは柔らかいけどどこか自信なげ。後者のほうはポジティブではっきりした宣言。同僚をインスパイアする、人を動かせるリーダーたちは後者を使う。

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男女平等がかなり進んでいるイギリスでも、多くの女性は仕事上で強気な表現を使わない。女性がリーダーに選ばれるためには、やっぱり言葉は大きな役割を果たすと思う。ロンドンのような、みんなで会議で議論したりストレートに自分の意見を言ったりする仕事環境が主流なところだと、基本、率直に自信を持ってはっきりものを言ったほうがいい。

すべき質問も、はっきりした表現も、職場という真剣勝負の場で闘ううえで大事なこと、と教えてくれたのは同世代の女性たち。ある意味では「自分の取締役会」がもうできている。MBAのときに知り合ったイギリス人、ラウラは必ずそこに入る。中国系オーストラリア人、芳フアンも入る。月に1回スキンケアとキャリアのことを1時間電話で話す、アメリカの西海岸に住んでいるMBA仲間のサンギアもそう。

彼女たちは将来きっと経営幹部レベルまで昇進するだろう。そのとき、私の取締役会はホントの「取締役たちの会」になるだろう。

前回:東京⇒ロンドン、33歳の私が痛感した男女不平等(5月20日配信)

鈴木 綾 ロンドンの会社員、エッセイスト

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すずき あや / Aya Suzuki

1988年生まれ。6年間東京で外資企業に勤務し、MBAを取得。現在はロンドンの投資会社に勤務。2017〜2018年までハフポスト・ジャパンに「これでいいの20代」を連載。日常生活の中で感じている幸せ、悩みや違和感について日々エッセイを執筆。日本語で書いているけど、日本人ではない。

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