最初は聞き流していたが、毎回値段が入ってくるので、だんだんとそれが気になるようになった。そして、その男性と3度目のデートを終えたところで、さきは私にこんな連絡を入れてきた。
「デートでのエスコートも支払いもスマートにしてくださるんですけど、何かにつけて、これがいくらした、あれがいくらだったと、いちいち値段を言うんですね。“自分は、これだけお金が使える男なんだ“というアピールなのかもしれないけれど、なんか話をしていて心地よくないというか。交際終了でお願いします」
5000万円の預金があっても「割り勘」
さらに、こんな男性(42歳)も。メーカーに勤めていて、年収は500万円。既に他界した両親の遺産を相続したため、5000万円近くの預金が銀行にあるという。
預金はあるが、銀行のお金には手をつけたくないらしく、生活は自分の稼ぐお金で切り盛りしていた。分譲マンションを持っていたがローンを払っているので、給料でやりくりする生活は無駄遣いをすることもなく、質素だった。
そして、デートはきっちり割り勘だった。
「2度目のデートで水族館に行ったんですけど、午後2時に待ち合わせをして、2時間くらい館内を見て出てきたら、『お茶飲みましょうか』となったんです。そのお茶が売店で買うペットボトルだったんですよ。売店横のベンチに座って、お茶を飲みました。しかも、自分の飲み物は自分で買うシステム(苦笑)。その後、食事に行くこともなく、最寄り駅で別れました」
この報告とともに、「交際終了でお願いします」と、さきは私に告げてきた。そして、続けた。
「たとえ銀行に1億円預金があったとしても、それを使わなければ、お金がないのと同じですよね。初めてのデートで夜に食事に行ったときも、メニューを見て『単品で頼むといくら、セットにするといくらか。そこに飲み物をつけるといくらか』と値段を計算して、どうやって頼んだら一番得かを考えていたんです。2回のデートを終えてみて、もしも彼と結婚したら、いつもお金にケチケチして、気持ちが寂しくなると思いました」
そこにいくと、お見合い活動4カ月目で出会ったあつおは、お金の使い方が非常にスマートだった。デートで連れていってくれるお店も、リーズナブルなのだけれど、雰囲気のいい、おいしいお店が多かった。デート代をさきに払わせることはなかったし、金額の細かい話をすることもなかった。
「いつもごちそうになってばかりでは申し訳ないので、デートのときはお礼のお菓子やお茶をお渡ししていました。小さなプレゼントでも、すごく喜んでくださる。これまでお会いした人のなかで、私が一番自然体でいられるし、一緒にいて楽しいんです」
そう言って、お見合いから1カ月半で、結婚を前提にお付き合いする“真剣交際“に入った。これはトントン拍子で結婚が決まるのではないかと思っていた。ところが、そこから3カ月経ったあたりから、何やら雲行きがあやしくなってきた。
あるとき、「面談をお願いします」とさきが申し出てきた。事務所にやってきたさきの顔が暗かった。
「私、これまであつおさんとのデートで、一度もお財布を開いたことがなくて。私が払おうとすると、『大丈夫だよ』とお会計を済ませてしまうので、なにかすごく大切にされているような気持ちになっていました」
そんな彼の優しさに応えようと、真剣交際に入ってお互いの家を行き来するようになってからは、お金のかかる外食は避けて、さきが手料理を振る舞うようになっていたという。
仲睦まじい付き合いが続いていたのだが、2人で住む家を見に行くようになってから、あつおの経済事情を知ることになった。
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