日本が「他国からの脅威」に曝されたらどうするか 現行の制度から考える武力攻撃と日本の対応

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③武力攻撃か、それ以前か、判断が難しいグレーゾーン事態

ここまでは明確な攻撃があったときにどうするのかというものです。

しかし、尖閣諸島に武装した漁民が上陸したり、船舶が襲撃されたりといった警察や海上保安庁では対応が難しいものの、武力攻撃に至らない事態、いわゆるグレーゾーン事態でどう対応すればよいのかという問題が議論されています。

日本の防衛法制では、武力攻撃以降、つまり戦時と、武力以前の状況、つまり平時が明確に分けて考えられています。しかし、戦時と平時が明確に区別されない事態が発生したときに、日本政府が対応できないのではないかという懸念が示されるようになりました。

グレーゾーン事態において、対処の法制は定められています。警察や海上保安庁の手に余るような状況では、自衛隊法第78条に規定された治安出動や第82条に規定された海上警備行動を発令することで、対応が可能です。

しかし、グレーゾーン事態が難しいのが、法的には可能であっても現実的に対応できるのかです。

グレーゾーン事態では、中国の海警局など、実際に仕掛ける主体に加えて、周辺海域で待機している中国海軍との連携が想定されています。この場合に懸念されるのが、中国は自衛隊の介入を口実に、自国を正当化しようとするのではないかというものです。

一方、海上保安庁や警察では対応できない場合、自衛隊が出動しないとどうしようもないということもあります。グレーゾーン事態は判断の難しさを含んでいるという意味で複雑な問題です。

隣国・地域が攻められたら何ができるか

これまでは、日本が攻撃を受けた場合の法制度を整理してきました。しかし、日本が攻撃を受けなくても、周辺の国や地域が攻撃を受ける場合もあります。北朝鮮が韓国を攻撃した場合、中国が台湾を攻撃した場合がこれに該当します。

①密接な関係にある他国→存立危機事態

2015年に成立した安全保障関連法で、日本と密接な関係にあるアメリカなど他国に対する武力攻撃により、日本の存立が脅かされる状態を「存立危機事態」と定めました。こうした状況で、他に適当な手段がない場合、必要最小限度の実力行使にとどめるという条件で、集団的自衛権による武力行使を容認することになりました。

密接な関係にある国とはどういう国でしょうか。

2015年に提出された政府答弁書(「水野賢一参議院議員の質問に対する政府答弁書」内閣参質189第202号、2015年7月21日)において、「我が国と密接な関係にある他国」は、「外部からの武力攻撃に対し、共通の危険として対処しようという共通の関心を持ち、我が国と共同して対処しようとする意思を表明する国を指すもの」とし、「我が国が外交関係を有していない国も含まれ得る」としています。

一方、台湾のように日本が国と認めていない地域は、「お答えすることが困難」と回答を避けています。台湾が攻撃を受けたときに限らず、存立危機事態は提起されたことがありません。実際にどうなるかはわかりません。

②米軍の介入→米軍基地の使用を認めるかどうか

他国で危機が発生した場合、日本ではなく、アメリカが支援する場合もあります。アメリカが日本の基地を使って戦闘行動を行うときには、日本政府と事前協議を行うとしています。実際に行われるかはわかりませんが、制度上は行われることになっています。

また、重要影響事態に際して「我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律(重要影響事態安全確保法)」に基づき、放置したら日本への武力攻撃の恐れがあるなど、日本の平和と安全に重要な影響を与える状況、つまり重要影響事態に認定することが必要になります。こうすることで、米軍の防護や後方支援が可能になります。

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