BMW7シリーズ最高峰がV12⇒EVへ変貌した意味 歴史や伝統を捨ててもいい圧倒的存在になれるか
振り返れば今年の1月、BMWは最後に限定数が作られる7シリーズの最高峰モデル、「M760i xDrive」をもってV型12気筒エンジンを搭載するBMWの歴史に終止符を打つと明らかにした。そもそもBMWが量産車に初めてV12ユニットを搭載したのはE32型と呼ばれた2代目7シリーズに於いてであった。1988年に登場した750iLがそれだ。
当時はまだ宿敵メルセデス・ベンツSクラスにも未搭載の、第二次大戦後の市販ドイツ車では初となったV12ユニットの設定が、7シリーズのイメージを大きく引き上げたことは間違いない。
そんなBMW製V12ユニットも、今やグループ内のロールス・ロイス車のために生産されているものがほとんどだが、そのロールス・ロイスはすでに将来的に内燃エンジン車の販売をやめ、ラインナップをBEVのみに絞ると宣言している。「ロールス・ロイスのユーザーは中途半端なもの(PHEVなど)は求めないのです」という説明には驚きつつも、まあそうかもしれないと思わされたものだ。
内燃エンジンの究極からBEVへ
もはやロールス・ロイスが使わないとなれば尚のこと、BMWではさほど数の出ないV12ユニットを延命させる理由は無い。そうしてBMWブランドでは唯一V12ユニットを用意していた7シリーズの新型には、それが用意されなくなったわけだが、代わりにこのタイミングでBEV版のi7が据えられるという、そのスピード感には驚かされた。しかも当面、ヨーロッパではこのi7のみが販売されるというのである。
問題は、このBEV版7シリーズが、これまでV12ユニットを愛用していたユーザーを納得させるものになるのかということ。これに尽きる。それは将来のロールス・ロイスについて語る際にも、そのまま当てはまる問いだ。
世の自動車のエンジンが4気筒や6気筒、あるいはせいぜい8気筒だった時代には、12気筒はまず記号としても圧倒的な羨望に繋がったはずだし、実際のフィーリングとしては格段にスムーズ且つパワフルで、異次元の感動をもたらしたことは想像に難くない。実際、先代M760Li xDriveの硬質でキメの細かい回り方、高回転域に近づくほど澄んでいくサウンド、そして途方も無いパワーには、内燃エンジンの究極を見た気がしたものである。
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