新型コルベットが「伝統のFR」を捨てた理由 ライバルに勝つ高性能化とマーケティング
2020年1月に開催された「東京オートサロン2020」でのシボレー新型「コルベット」の発表は、大きな話題を提供するものだった。なにしろ、2019年夏に発表されたこの新型コルベットにとっては、これがアジア地域での初公開。ゼネラルモーターズ・ジャパン(GMジャパン)としても、東京オートサロンには初出展だったのである。
それだけじゃない。東京オートサロンは物販、車両販売も可能なため、シボレーのブースには商談エリアが設けられ、同時に全国で予約受け付けを開始。結果的に400台を軽く上回る受注を獲得しているという。この数字、歴代コルベットでは数年かけて売ってきた数なのだから、まさに画期的というほかない。
展示された新型コルベットは、この週末のためだけにアメリカから空輸されていて、オートサロン閉幕後にはすぐに本国に送り返された。コストも手間暇もかかったに違いない。GMジャパンにとってはトライだったが、その甲斐は大いにあったわけだ。
もちろん注目されたのは、そうした舞台装置だけが理由ではない。クルマ自体が、オートサロンを訪れるクルマ好きの目をひくものだったからこそ、今までにないほどの熱い視線を浴びることになったのは間違いない。
766psの先代「ZR1」を上回るパフォーマンスを
いちばんのポイントは、エンジンを車体中央、具体的には2座席のキャビンのすぐ後方に積むミッドシップレイアウトの採用だろう。
1954年に初代モデルが登場して以来、これまでずっと貫いてきたFR(フロントエンジン・リヤドライブ)レイアウトから、通算8世代目にしての転換は世界のスポーツカーファンを大いに驚かせた。
フェラーリやランボルギーニなど、世界のスーパースポーツカーが採用するミッドシップ。それをなぜ今、このタイミングで採用したのかは、2月にラスベガスで開催されたプレス向け国際試乗会の場で、開発陣から直に聞くことができた。
シボレー・パフォーマンスカーズのヴィークルパフォーマンスエンジニア、リードヴィークルダイナミクス・ライド&ハンドリングのスティーブ・A・パディラ氏の答えはこうだ。
「先代コルベットの最高峰モデルだったZR1は、最高出力766psにも達しました。FRレイアウトで受け止められる出力として、限界を極めたと思います。それを上回るパフォーマンス、そして感動を実現するにはミッドシップ化しかないというのが、われわれ開発陣の結論でした」
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