新型コルベットが「伝統のFR」を捨てた理由

ライバルに勝つ高性能化とマーケティング

ミッドシップは、重量物であるエンジンが車体中央近くに積まれるため、前後バランスに優れ、旋回性能が高くなる。しかも、駆動輪であるリヤタイヤにより大きな荷重がかかるから、タイヤのグリップ力をめいっぱい引き出しやすい。つまり、より大きな出力を受け止めることができる。

フロントエンジンのままなら4WD化も一案だが、重量がかさむという欠点がある。これが、世界の名だたるスーパースポーツカーがミッドシップを採用する理由。コルベットも、そこに倣ったのだ。

おそらく、そこにはWEC(世界耐久選手権)などで戦うコルベット・レーシングからの要望もあったのだろう。

モータースポーツの実戦でフェラーリ「488GTB」や、レース用はミッドシップ化されているポルシェ「911」といったモデルと相まみえるには、FRでは限界がきていたのは明らかだった。今やマーケティング上、モータースポーツはコルベットにとって無視できないフィールドなのである。

実際、試乗会場には開発中の車両も展示されていたのだが、2014年には最初のミッドシップの試作車でテストを始めていたという。つまり、先代が出たときには、すでにミッドシップ化は決まっていたわけだ。

OHVが安定感につながる理由

ステアリングを握ってみると、新型コルベットは操舵と同時に旋回が始まるかのような軽快な身のこなしが、まず鮮烈だった。特徴的だった長いボンネットを見ながらのコーナリングより断然、軽快な印象が強まっている。

一方でミッドシップには、速いけれどスピンにいたる挙動変化が速く、ピーキーというイメージもある。ところが新型コルベットは、サーキットを全開で攻める領域ですらも、そうした不安定さをほとんど感じさせない。それはなぜだろうか。

そう思案して行き当たったのは、コルベットのエンジンが伝統のV型8気筒OHVレイアウトを踏襲しているという事実だ。

搭載されるエンジンは6.2リッターV8 OHV 16バルブ(写真:General Motors)

OHVという機構は、高回転化に向かないことなどから今や絶滅危惧種なのだが、一方でエンジンをコンパクト化でき、重心を下げられるという大きなメリットがある。コルベットは後者のメリットを生かすべく、OHVを熟成させながらずっと使い続けてきた。

先代までは、それがフロントエンジン車としては異例なほどのノーズの低さとして結実していたわけだが、搭載位置が変わった新型では、コンパクトで重心の低いそのエンジンが、車両の姿勢変化を抑えてきわめて安定した挙動を生み出すことに貢献している。

しかも、リヤタイヤのグリップがしっかりと発揮されるから、パワーをかけても容易にタイヤが空転することなく、確実に推進力に繋がる。

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