新型コルベットが「伝統のFR」を捨てた理由 ライバルに勝つ高性能化とマーケティング

拡大
縮小

実際、最高出力495hpにもなる新型コルベットで臆することなくアクセルを全開にできるのは、まさに新採用のミッドシップと伝統のOHVユニットの組み合わせのおかげである。FRレイアウトでは、これだけのレベルの操縦性は実現不可能。ミッドシップ化は大成功といえるはずだ。

これまで日本市場でのコルベットは、マニアックなアメリカ車ファンやコルベットファンだけが選ぶ存在だったといっていい。しかし新型は、まさにポルシェ911をはじめとするヨーロッパ、あるいは日本のスポーツモデルと対等の立場で比較される、比較できる存在になった。東京オートサロンのブースの大盛況ぶりに表れていたのは、そこへの期待の高さだろう。

また、日本のユーザーにとっては、初の右ハンドル仕様での導入になることもトピックとして挙げられる。これはコルベットの歴史上、初めてのことである。

日本上陸は2021年だが待つ価値はある

実はコルベットは今、ヨーロッパでも確実なセールスを獲得している。先に記したWEC、特にル・マン24時間耐久レースなどのモータースポーツでの活躍により、人気が高まっているのだ。

そうなるとスポーツカー大国、モータースポーツ大国のイギリス向けの右ハンドル仕様を作らないわけにはいかない、というのが開発の理由。日本はその恩恵にあずかった形だ。

コルベット史上初となる右ハンドル仕様(写真:General Motors)

デザインマネージャーとして、主にインテリアを手掛けたトリスタン・A・マーフィー氏は「ついでのように作るのではなく、左ハンドルとはしっかり作り分け、最善のものに仕立てている」と自信満々だった。

たとえばポルシェやフェラーリなどの場合、右ハンドル仕様はペダル配置などに、どうしても妥協が生じてしまっているが、さてコルベットはどんな仕上がりになっているだろうか。

期待が高まるところだが、日本上陸は2021年春以降の予定と、まだまだ先。しかし気になった方は、待つ価値は絶対ある。きっと、ここから日本のコルベットの新しい章が始まることになるに違いない。

島下 泰久 モータージャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT