BMW7シリーズ最高峰がV12⇒EVへ変貌した意味 歴史や伝統を捨ててもいい圧倒的存在になれるか

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それには理由がある。実は新型7シリーズ、今回は内燃エンジンと小型モーターを組み合わせたマイルドハイブリッドモデルが2種類に、何とBEV(バッテリー電気自動車)版が登場している。ハイエンドに据えられているのは、このBEV版の「i7」である。

BEVは大容量のリチウムイオンバッテリーをホイールベース間の床下に搭載しなければならず、そうなれば床が高くなりボディが分厚くなるのは必至。BEVとして考えれば違和感の無いセダンフォルムを実現しているとも言えるが、それでも発表されている全高は1544mmで、現行モデルの1480~1485mmからざっと60mm高くなっている。

伝統を捨ててもいい圧倒的なデザインなのか?

件の上下2分割とされたヘッドライトの採用も、この天地方向の厚みを中和させるためだろう。そう考えれば納得はできるのだが、しかし伝統的なBMWらしさがさらに薄まったのは事実である。最近のBMWのデザインは、まさしく丸型4灯式のヘッドライトをはじめとする伝統的なディテールをことごとく排除している。無論、歴史に拘泥する必要はなく、新しく良いものがあればそれを積極的に採用すればいいのだが、さてこのデザインは伝統を捨ててもいいと思わせるほどの圧倒的な何かを持っているのだろうか…?

それに比べればインテリアは、まだ常識的に見える……のは、外観の変貌ぶりに麻痺してしまっているのかもしれない。BMWカーブドディスプレイと呼ばれる計器とインフォテインメントを一体化した湾曲パネルのディスプレイと、幾何学的な模様のトリムの組み合わせは、すでにiXでも見られたものである。

そのiXのように極端ではないが、ステアリングホイールがもはや真円ではないのも、往年のファンからしたら嘆かわしいところかもしれない。きちんと握って、クルマと対話しながら走るのは、もういいよと言われているような気がして。

リアシートは形状もステッチの入れ方もアグレッシヴだが、快適性は高そう。そして見上げれば目の前には31.3インチという車載用としては巨大なBMWシアタースクリーンが備わっている。自ら運転するのでなければ、居心地の良さがこれまでにないほどのレベルにあるのは間違いなさそうである。

次ページV12気筒に終止符を打つことを決めたBMW
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