地方銀行の行員さんがインタビュー取材に応じてくれると聞き、東京郊外の喫茶店に向かった。如才ない人物を想像していたのだが、喫茶店に現れた松田周平さん(仮名、40歳)はちょっととっつきの悪い人物だった。
「面白い話はできませんけど、それでいいなら……」
緊張や謙遜をしているわけでなく、初対面の相手に笑顔を振りまくことはしないタイプのようだ。それでいて、僕と編集者に会うことを嫌がっているふうでもない。すねた少年のようなかわいげを感じさせる。顔も雰囲気もお笑い芸人のバカリズムに少し似ていると思った。
一期一会? 銀行員の「社内恋愛」事情
周平さんが結婚したのは1年前。相手は短大卒入行の同期で2歳下の洋子さん(仮名、38歳)である。
「20代後半のときに同じ支店に配属され、そのときに3年間付き合って別れ、6年後に再会してまた2年ほど付き合ってから結婚しました。いわゆる『元サヤ婚』ですね」
淡々とした口調で話す周平さんだが、行内恋愛の同期と元サヤ婚というのは驚きだ。気まずさはなかったのだろうか。
聞けば、周平さんが勤める地方銀行は数千人規模の行員がおり、支店も関東地方に広く点在している。若いうちは基本的に3年に一度は異動があるため、同期ではなく支店内での「一期一会」の恋愛が盛んなのだという。派手に遊ぶと査定に響くことになりそうだが、行内にひとりふたりは元恋人がいるのは珍しくない。そして、多くの人たちが30歳までに身を固めていく。
「支店内で仲の良い6~7人でスキーや旅行に行っていました。僕たちとは別にできた2組のカップルはさっさと結婚していますね。僕も30歳ぐらいで結婚したかったのですが、付き合って3年後に向こう(洋子さん)から『気持ちが冷めた』と言われて振られてしまいました。
冷めた理由ですか? 明確なことはわかりません。もうちょっと様子を見ないか、と引き留めた記憶はありますが、向こうは頑固なので聞いてくれませんでした。ハハハ」
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