同じ銀行で働き続けているという共通点に加えて、誕生日メールの交換という細いつながりが続いていた2人。やがて再会の時がやって来る。きっかけは洋子さんからのぎこちないアプローチだった。周平さんは36歳になっていた。
「僕たちは2人ともサザンオールスターズのファンなのですが、友人を誘っていたコンサートのチケットが余ったから一緒に行かないか、との連絡が来ました。僕もそのときは付き合っている女性がいなかったので別にいいかな、と。それからは月に1度ぐらいのペースで映画などを一緒に見に行くようになりました」
半年後、洋子さんのほうから「相手がいなければどうですか」と告白をされた。周平さんは6年ぶりによりを戻すことを決め、1年半後には結婚する。
30代になって、わかることもある
おめでたい話だが、周平さんと同じように女性に振り回される傾向がある僕としては少し意地悪な質問をしたくなる。かつて明確な理由を言わずに去った元恋人を許して結ばれる気持ちになぜなれたのか。嫌味のひとつでも言ってやったのだろうか。
「振られたときはちょっと悔しかったですよ。最初の1年ぐらいは誕生日メールも送っていなかったと思います。でも、5年も経つと当初の悔しさは忘れてしまいます。ほかに好きな人もいないから別にいいかな、と。ただし、同じことは繰り返したくないので、1年ぐらいは慎重に様子を見ましたね。以前の彼女は頑固で気分屋だったのですが、再会してからはだいぶカドが取れたな、と感じました」
1年間は許せないけれど5年経つと怒りや悔しさを忘れて懐かしくなる、というのはリアルな実感だろう。ただし、その期間にほかの異性と出会って付き合ったりすることが必要だと僕は思う。
比較をして「やっぱりあの人がいちばんだ」と気づくためではない。モテ願望と冒険心をある程度は満たし、その過程で自分の美点や欠点、生活観、家族観などを肌感覚で知るためには、何人かの異性の助けがいるのだ。
「確かに、最初に付き合ったときにそのまま結婚していたら、きっとうまくいっていなかったと思います。そもそも向こうには結婚願望がありませんでしたからね。30代後半になって、弟や後輩も結婚していき、ようやく焦るようになったみたいです。
今の生活には安心感があるようですね。僕のほうも価値観が一緒の相手と過ごすのは楽です。向こうは相変わらず気分屋のところがありますが、一晩寝るとケロッとしています。機嫌が悪いときは放っておけばいいのだとわかりました」
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