周平さんは乾いた笑い声を立てながら当時を振り返る。そもそも洋子さんを好きになった理由を聞いても、「明るい性格に引かれた」としか教えてくれない。想像だが、洋子さんは明朗で活発だけど、一筋縄ではいかない性質の美女なのだろう。
別れて6年間、年1回のメールがつないだ縁
別れてから5~6年間は「プラプラしていた」という周平さん。具体的には、独身の同僚たちと幹事持ち回りで合コンをセッティングして、さまざまな女性と出会いまくる日々だ。そのうち2人とは付き合ったが、しばらくすると周平さんのほうから別れを切り出したという。
「決定的な理由はありません。僕はひとつでも合わないところがあると、気になってのめり込めなくなります。たとえば、食事はおろそかにしたくない。ランチをファストフードで済ませて平気な女性は嫌ですね」
洋子さんの性格を頑固だと評する周平さんだが、彼自身もかなりこだわりの強い人物なのだと感じる。こだわりを他人に押し付けることはしないが、自分を押し殺して所帯を持つこともしない。生涯独身で飄々(ひょうひょう)と過ごしてもおかしくない男性である。
しかし、周平さんには切れそうで切れない赤い糸があった。6年前に別れたはずの洋子さんだ。彼女の連絡先は消しておらず、年に1、2回はメールを送り合っていた。
「お互いの誕生日のときに、おめでとうメールを送る程度です。何をしているのか、恋人がいるのか、などはまったく知りませんでした。あの6年間のことは今でも聞きませんし、聞かれもしません」
憎み合って別れたのではないのだから、誕生日ぐらいは祝いの言葉を捧げる。今、どんな状況にあるのかはあえて聞かない。再会して結婚しても過去の詮索はしない――。まさに晩婚さんならではの大人の恋愛作法だ。
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