大学破綻--合併、身売り、倒産の内幕 諸星裕著 ~今果たすべき大学の役割とは何か

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ちなみに文科省のホームページによれば、11年度開設予定の4年制大学は7校、短期大学1校、大学院大学は2校。短期大学から4年制大学への衣替えも3校ある。まだ正式に認可されているわけではないが、日本の大学は11年度に780校を超えるようだ。

少子化という自明の未来があるのに、なぜ大学が増え続けたのか。特殊な組織で、時代遅れであり、経営感覚がなく、無駄が多いからだ。

では大学バブルのはじけた時代に、大学が果たすべき役割とは何か。もし役割があるならその大学は生き残れるだろう。この問いかけに対し本書は明確に答えている。「ミッション」を明らかにして実行することだ。

ミッションとして抽象的で高邁な精神を謳う大学が多いが、著者のいうミッションは違う。「大学ごとの、現代の学生と向かい合う対処の仕方」がミッションであり、「きちんとした市民生活が送れるような人間として教育して卒業させる。そのような人間として卒業させることを保証する」のである。このようなミッションを遂行している大学は多数存在する。

著者の諸星氏が教授を務める桜美林大学、金沢工業大学、日本福祉大学などが紹介されている。失敗例も挙げられており、参考になる。

最終章「大学から日本がよみがえる」では、21世紀初めの時期に求められる大学像を具体的に論じ、3種類を挙げている。

1つ目は世界レベルの研究大学だ。具体的には奈良先端科学技術大学大学院。超優秀な研究者が超優秀な学生に手ほどきし、一緒に研究する。

2つ目は本当の意味の教養人を養成する大学。例として取り上げられているのは、東京大学と国際基督教大学の教養学部、慶応大学の総合政策学部、早稲田大学の国際教養学部、そして秋田県の国際教養大学だ。

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