大学破綻--合併、身売り、倒産の内幕 諸星裕著 ~今果たすべき大学の役割とは何か
3つ目がもっとも重要だ。全入時代に突入し「なんとなく大学生」が増大する状況を踏まえた大学。つまり「あまり勉強のできない子」、偏差値でいえば35から40くらいの学生を集める。4年ではなく5年、6年かかるかもしれないが、一生懸命に鍛え、社会に役立つ人材に育てるというミッションの大学だ。この大学には「勉強のできない子」しか入れない。だからミッションに忠実な教育ができる。
このレベルの偏差値の大学はいくつも存在し、「学生の学力低下」の象徴として論じられている。そして大学自身も学生自身も「どうせ下流大学」という意識に甘んじ、変わろうとしていない。学力が低いことより、「変わろうとしない」ことが問題だ。
著者のいう大学は偏差値では同じでも、ミッションを持っているから、学生が教員と一緒に苦労して成長していく。そして4年で卒業しなくても、最終的には社会人として恥ずかしくない人材に育って卒業する。
この本では触れられていないが、国際教養大学が好例ではないかと思う(偏差値が高い点は異なる)。新設校なのに就職率100%と報道され、偏差値が急上昇した。その一方、4年で卒業できる学生は半数程度という。
ただ留年の理由はバイトや遊びではない。大学の設定するレベルに到達しないから留年者が多いのだろう。学生は留年してもレベルに達してから卒業する。人事の立場で国際教養大学の学生を評価すれば、大学が十分な教育を施しているので、安心して採用できる。
こういうミッションを持ち実行する大学が増えていけば、学生は大学で成長し、社会人としての基礎能力を持つだろう。
(HRプロ嘱託研究員:佃光博=東洋経済HRオンライン)
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