現地日本人が語る「上海ロックダウン」の過酷実態 破綻する「ゼロコロナ政策」だが、批判はできず

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これほど厳格なロックダウンを敷いていても、感染者は増えるばかりだ。上海市内では毎日2万人超の新規感染者を計上し続けている。

「うちの小区は30階建てのマンションが15棟ほど集まっているのですが、この中で1人でも感染者が出ると、封鎖が14日、延びるんです。毎日誰かは感染しているので、そのたびに14日延長。エンドレスです」

いったいいつまで自宅軟禁が続くのか不安を感じているが、外国人には「帰国」という選択肢もある。上海から日本までの飛行機は大幅な減便となり運賃が高騰してはいるものの、飛んではいるのだ。しかし実際のところ、空港までたどり着けないのが現実だ。

まず自宅から出るには小区を管理する委員会に許可を得る必要があるが、勝間田さんはこれを断られてしまったという。ほかの地域でも同じように、帰国したい日本人の外出許可が得られないというケースが続出しているため、在上海日本総領事館が各小区に要請文書を出すなど働きかけてはいるが、対象者が多くまったく手が足りていない状況だ。

外出許可が下りても交通手段がない

仮に外出許可が下りたとしても、今度は交通手段がない。ロックダウンは公共交通機関やタクシーにまで及ぶ。唯一、空港と市内を結ぶシャトルバスが運行されているが、ルートが大幅に減っているため最寄りのバス停まで5キロほど。生まれたばかりの子どもと小学生を連れて歩くしかない。

さらにシャトルバスに乗るためには48時間以内のPCR検査陰性証明が必要だが、これをどう用意すればいいのか。毎日のように小区で行っているPCR検査のものは使えないという。市内の病院はロックダウン下の厳戒態勢にあり、一般的なPCR検査を受けつけているかもわからない。

クリアしなくてはならないハードルがあまりにも多く、勝間田さんはいったん予約した航空券をやむなくキャンセルした。

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