意外?コロナ禍で「PDF」の関心急増した納得の訳 すでに多くの人に浸透しているはずのITツール
「Acrobat DC」は有料(Standard版とPro版がある)で提供されているが、有料ツールが必要となる理由は何か。1つはPDF形式のファイルでもテキストや画像の編集、ページの並べ替えなどができること。もう1つは「セキュリティ」だ。
捺印した紙の書類をスキャンしてPDF化したものを、メールに添付して送っても、ペーパーレスとはいえない。不動産など特定の業界や中小企業など、ファクスがまだまだ現役のところもある。業務を完全リモート化するには、完全ペーパーレスのワークフローが必要で、このようなときにアドビの有料ツールが役に立つのだ。
アドビのAcrobat Pro DCには、PDFを作成・編集するだけでなく、「編集制限をかけられるので、重要な契約のやり取りも安心して対応することができる」(ITreviewのレビュー)。
電子署名も実装されているので、セキュリティを確保した、簡単なワークフローも構築でき、印影も登録できる。あるフィンテック企業は、実印の印影画像を貼り付けた偽造契約書により、数億円の融資詐欺にあった。
紙であれば、印影を印刷した偽造などはひと目でわかるが、電子ファイルでは簡単に見分けがつかないからだ。こういった問題も、電子署名機能で予防できる。
ちなみに、稟議書の捺印については「礼儀として、上役の印鑑に向けて少し傾けて印を押す」という笑い話がときどきネット上で話題になるが、ある関係者によると、そのような要望は本当にあるという。
シンプルであることが評価される「CubePDF」
その中で、Acrobatと伍する知名度と満足度を誇るのが、キューブ・ソフトの「Cube PDF」だ。開発元は社員10人に満たない大阪の会社だが、累計ダウンロード数1800万、アクティブユーザー数も120万に上る。
同社の津川知朗社長によると、機能の充実と引き換えに動きが遅いAcrobatと比べ、機能を絞っている分、操作がシンプルで軽快な点が、必要最低限の機能しか使わない大半のユーザーに支持されているそう。「機能面では最低限な設定しかできませんが、シンプルであることが逆に扱いやすい」というITreviewへの投稿がそれを裏付けている。
数年前、ある地方銀行が広報発表したPDFファイルのプロパティを開くと、リークを疑わせる情報が残っていて、ネット上で話題になった。
ファイルをPDFに変換すると、プロパティ情報に、元のファイル名が記録されるという、それ自体は何も問題のない基本的な機能なのだが、元ファイル名に内部事情や個人情報をつけたままにしておくと、そのような問題が発生する。
Cube PDFでは、そのような情報漏洩を防ぐため、元ファイル名をPDFのプロパティに書き込まない設定を標準にしている。このような、かゆいところに手の届く機能を素早く開発できる小回りの良さも、ユーザーから支持される理由だろう。
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