5人超の大人数で会議やっても質が下がる2つの訳 10人以上のほうが良いという事はまずありえない

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Erhart, Lehment, and Vasquez-Paz らは金融政策委員会の人数と、物価の安定性の関係を調べています。彼らは5人、7人、9人が定員の国は物価が比較的安定しており、また人数を増やしても安定性が上がるわけではないと結論付けています。これらの研究は、人数と物価安定性の因果関係を厳密に調べるといったものではありません。しかし実際の会議を題材にした研究として貴重ですし、非常に示唆的でしょう。

実際の会議ではなく、実験で会議やそれに似た状況をつくって、そこで人数が結果に与える影響を分析した研究はいくつか有力なものがあります。ざっと結論だけ述べると、「5人の集団は、1人の個人よりも、状況変化を正確かつ迅速に察知する」。これはまあ当たり前かもしれません。5人だと、いわばセンサーが5つあるわけだから、1人よりも状況変化に気付きやすい。

ところが4人の集団と8人の集団だと、ほとんど察知に違いはない。これは当たり前ではないですね。人数を増やしたからといって、判断のよさが上がるというわけではない。アメリカでは1970年前後に、多くの州で陪審員の人数が6人から12人へと増やされました。

しかし、この変更によって、以前ほどきちんとした議論が陪審員の間でできなくなった、という指摘が多くあります。やはり10人を超える人数は、会議には多すぎるのでしょう。わたしは会議に関する論文をかなり読んでいると思いますが、「10人以上のほうがよい」といった結果は見たことがありません。

人数を増やしすぎると会議の質のはなぜ?

コンドルセ陪審定理は、人数が多いほど多数決の正解率が上がると示しています。これは数学的な定理だから正しいはずです。では、なぜ人間はその定理が示すとおりの結果を生まないのでしょう。2つ主な理由があります。

第1に、人間は手抜きをする。自分が頑張らなくても誰かが頑張ってくれるから、自分は頑張らない。そう聞くと当たり前に聞こえるでしょうが、実験研究を見ると、そんなとき人は本当に手を抜きます。そして、それを怠惰とばかりとらえてはいけません。やりがいをもてないのですね。本人の問題というよりは、職場環境の問題です。やりがいをもつのが難しい職場環境となってしまっている。

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