「宇宙葬」を亡き娘にプレゼントした夫婦の心情 費用は55万円で、遺骨の一部と髪の毛が「飛行」

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もともと宇宙が好きで、宇宙ビジネス新規事業の種を創出する「宇宙人クラブ」という有志団体の事務局として活動している輝明さん。宇宙に関する情報をチェックしていたところ、宇宙葬についての情報を得たという。

今回の宇宙葬を実現させたのは、スペースX社の日本代理店である「SPACE NTK」社。同社にとっては今回が初めてのミッションとなった。

「他社の宇宙葬では遺骨がほんの少量しか搭載できない。こちらであれば自分たちのDNAも一緒に搭載して送ることができるということがポイントだった」と輝明さん。実はカプセルの中には、こぶし大サイズのことちゃんの遺骨と、長倉さん夫妻の髪の毛を一緒に入れている。

長倉紀音さん(写真:長倉さん提供)

「パパとハワイでデートしたい、という夢は実現できなかったけれど、これで家族一緒に宇宙旅行を楽しむことができるかな」

輝明さんはことちゃんの遺骨と長倉さん夫妻のDNAを搭載した人工衛星の位置情報を確認しながら、時折空を見上げ心躍らせる。

この人工衛星は、5~6年程度地球を旋回し、最後は地球の引力に引き寄せられ、大気圏に突入して燃え尽きるそうだ。

民間人の宇宙旅行で宇宙がますます身近に

宇宙旅行は自分とは遠い世界のことで、縁がないと思っていた人でも、2021年、宇宙との距離が縮まったことを感じた人は少なくないだろう。

スペースX社の「Inspiration4」と呼ばれるミッションでは、2021年9月に初めて民間人だけで宇宙へ行き地球を周回した。日本では、実業家の前澤友作氏が国際宇宙ステーション(ISS)に滞在、わかりやすい言葉で情報発信し続けたことは記憶に新しい。

宇宙旅行が現実味を帯びてきた今、話題性という意味で注目されていた宇宙葬も、単なる物珍しさから一歩前進したように思う。

宇宙葬とは、故人の遺灰などを納めたカプセルをロケットに載せて宇宙空間に打ち上げる葬送方法。宇宙葬を手がけるアメリカ・セレスティン社の公式ウェブサイトによると、人類で初めて遺骨が宇宙空間へ放たれたのは1997年4月21日で、その際には「スタートレック」のプロデューサーであったジーン・ロッデンベリー氏ら24人分の遺灰がロケットに搭載された。

なんとも夢のある話ではあるが、宇宙空間に行くことができる遺骨はセレスティン社の場合、1~7グラム。つまり最大でも小さじ山盛にしたくらいの量で、物足りなさは否めない。そのため海外では何度も分骨して宇宙葬を希望するリピーターもいるとか……。

スペースデブリ、つまり宇宙ゴミとなってしまうのではないかという心配については、関係者曰く、「大気圏に突入する際に、すべて燃え尽きてしまうので、大丈夫」だそうだ。

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