「宇宙葬」を亡き娘にプレゼントした夫婦の心情 費用は55万円で、遺骨の一部と髪の毛が「飛行」

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11月、ロケットに搭載する箱を準備するSPACE NTKの葛西さん(写真左端)とスタッフ(写真:SPACE NTK)

今回の宇宙葬をプロデュースした「SPACE NTK」の代表である葛西智子さんは、これまで約30年にわたって葬儀業界で多くの別れの儀式をプロデュースしてきた。そんな中で「亡き後は星になりたい」という思いが表出するようになり、宇宙葬プロデュースにつながったという。2017年に同社を設立し、宇宙ビジネスにかかわる人脈を広げていった。

「宇宙開発企業をまわったり、国際宇宙開発会議にも参加しましたが、技術的な問題や心情的な理由で難しいと、実現に向けてのハードルは予想以上に高かったです」と葛西さん。しかし、その過程でスペースX社の日本人社員と出会ったことで同社の創設者およびCEOであるイーロン・マスク氏とのパイプができ、2020年に直接契約にこぎつけた。

55万円で50グラムほどの遺骨が入る

遺骨を納める筒形のカプセルは大中小の3種類。大(写真)はパウダー状にした遺骨のすべてを納めることができ、費用は税込み550万円(写真:SPACE NTK)

スペースX社の提案もあり「世界初」の試みも行っている。宇宙葬に特化した人工衛星にするため、町工場である加藤製作所(墨田区)に製作を依頼。今回ペットの遺骨や副葬品も一緒に打ち上げるという世界初のオリジナルサービスを展開した。費用は直径5センチ程度の筒形小カプセルを使用した場合、税込み55万円~で、この中には50グラムほどの遺骨が入る。前述の長倉さん夫婦が利用したものもこのプランである。

今回、「MAGOKORO」と名付けられた人工衛星に搭載されたものは、20センチ四方の箱が3つ。1つめの箱は5名分の遺骨(いずれも遺骨の一部)と、5匹分のペットの遺骨が入っている。そのほか20人ほどの方の髪の毛。ことちゃんと、長倉さん夫妻の髪の毛が入っているのもこの箱だ。

人工衛星に搭載された折鶴。ボックスの大きさは縦横20センチ、深さ10センチ(写真:SPACE NTK)

2つめの箱には、500羽の折鶴。これは葛西さんが宇宙ビジネスの交流会を通じて出会ったLA在住の方が発起人となって集められたもの。

また、3つめの箱には、子ども食堂を中心に集められた3000枚のメッセージカードが収められた。宇宙葬を支援している子ども食堂の関係者が、ぜひ一緒に子どもたちの夢を載せたいと全国の子ども食堂に声をかけて集めたものだ。

打ち上げの様子をフロリダで直接見届けたSPACE NTK社の葛西さん。
「宇宙に夢を抱いている人は多いはず。亡くなった方だけではなく、『宇宙想』としてさまざまな想いを宇宙に乗せて広げるお手伝いをしたい」と葛西さんは宇宙に想いを馳せる。

吉川 美津子 社会福祉士

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きっかわ みつこ / Mitsuko Kikkawa

葬儀・お墓・終活ビジネスコンサルタント。(一社)供養コンシェルジュ協会理事、(一社)葬送儀礼マナー普及協会理事。駿台トラベル&ホテル専門学校、上智社会福祉専門学校非常勤講師。大手葬祭業者、仏壇・墓石販売業者勤務を経て独立。コンサルティング業務のほか、葬送・終活関連の人材育成に携わっている。また福祉職として、介護・福祉と葬送・供養をつなぐ活動を行っている。『葬儀業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』『お墓の大問題』『死後離婚』等著書多数。「吉川美津子のくらサポラジオ」(レインボータウンFM)毎週日曜日放送中。

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