会議で判断誤る残念な人々と正しい人々の決定差 集団は個人より妥当に判断するが忖度が邪魔する

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電気回路が絶対にエラーを起こさないのであれば、常に3本とも同じ情報を送るはずです。しかしそこまで高性能ではない。だから3本のあいだで、2対1で意見が割れるようなことが起こる。そのときは多数派である2本のほうの意見をとるというわけです。

みなさんは「それでも誤作動する確率はゼロにはならないのでは?」と思ったかもしれません。その通りです。3本のうち2本が同時に誤ったら、誤作動が起こります。ただしその確率は低い。1本の電気回路がエラーを起こす可能性を0.01としましょう。そうなると、2本が同時にエラーを起こす可能性は「0.01×0.01=0.0001」で1万分の1になります。つまり1本1本の電気回路はときにエラーを起こしても、2本が同時にエラーを起こす確率は非常に低い。だから多数派が正しい確率が上がるわけです。

なお、この理屈が成り立つためには、個々が正しい確率が50%を超えてないといけません。個々が正しい確率が50%より低かったら、多数派が正しい確率は、それよりさらに低くなります。

多数派の判断が正しい確率はどの条件下で高くなる?

ノイマンがコンピューター設計に応用したコンドルセ陪審定理は、どうしたら人間社会でも成立するでしょうか。そこでこの定理が成立するための主な条件を2つ挙げます。

1つめは、まず大前提として、電気回路たちがみな同じ問いに正解を出そうとしていること、つまり目的を共有していることです。ときにエラーを起こすとはいえ、電気回路たちは、常にみなが共通の問題に正解を出そうとしています。

2つめは、電気回路たちは他者の意見に追従したり、空気に流されたりしません。仮にA、B、Cの3本の電気回路があり、AをボスとしてBが追従しているとしましょう。すると「Aひとりの意見」が「集団ABの意見」となり、それが多数決を経て「ABC全体の意見」になる。これでは、せっかく複数の電気回路を使っている意味が完全に失われてしまいます。電気回路はそういうことをしません。だからノイマンが期待したように全体として正しい判断をする確率が高くなります。

電気回路たちは、それぞれが独立して意思決定を行います。そこに遠慮や忖度は存在しませんし、他の回路に意見を強要することもありません。こういう条件を「独立性」といいます。

次ページ陪審定理では人数が多いほど多数決が正しい確率は上がる
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