――ベラルーシ滞在中は首都ミンスクに加え、ウクライナと国境を接するゴメリ州でも医療支援をされました。
そうだ。チョルノービリ(チェルノブイリ)原発事故で、多くの放射性物質が広がった地域がゴメリで、住民に放射性物質による深刻な健康被害が出ていた。そのため現地に居住したことがある。
ウクライナには多数の原子力発電所があり、まさかロシアのプーチン大統領がそういった施設を攻撃することはないと思っていた。1986年のチョルノービリ原発事故は、その後福島第1原発の事故が起きたが、それでも原発では史上最悪の事故であり、ウクライナやベラルーシでは深刻な被害が今でも続いている。それをプーチン氏はわかっていると思っているし、第2のチョルノービリを生じさせてはいけないと思っているだろうが……。
一時期ロシア軍が攻撃したウクライナ東部・ザポリージャ原発がもし破壊され、放射性物質が放出されたとすれば、ロシアの首都モスクワも危険にさらされる。さらに世界に改めて放射性物質が拡散してしまう。
ベラルーシ現地の情報も得にくい
――隣国のベラルーシは、今回のウクライナ侵攻をどうみているのでしょうか。
首都ミンスクを中心に、私が代表を務めている「チェルノブイリ・福島医療基金」の関係者が住んでいるが、残念ながら現状についてよく話を聞けない。盗聴など統制が厳しいためだ。2021年夏にベラルーシのルカシェンコ大統領に対する反対運動が激しくなって以降、こういった統制が厳しく、スタッフに「元気か、無事か」といった程度は聞けるがそれ以上は難しい。とても心配だ。
ゴメリ州の住民も「チェルノブイリのようなことは2度と起きてほしくないし、起きることはないだろう」と思ってきた。当時の被災者はすでに子ども、孫と2代、3代となるほどの時間が過ぎたのに、また新たな危機にさらされている。
――菅谷学長が医療支援をされたのは1996年からです。現地の医療体制はどのような状況にありますか。
とてもよくなっている。西側の情報や支援も入っており、私がいたときよりはるかによくなった。強権のルカシェンコ大統領も「子どもは大事にする」と公言しており、医療体制の改善には注力しているようだ。われわれもゴメリ市に「子ども病院」を建設する際、相談などの協力を行った。とくに新生児を含めた小児疾患の診断・治療などを中心に、現地の医師と協力を継続してきている。
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