プーチンは「原発の怖さ」をあまりにわかってない チョルノービリ被災者支援した菅谷昭氏に聞く

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――現在、ウクライナの住民を日本で受け入れる活動が高まっています。菅谷学長は、松本市長時代に福島第1原発事故が発生し、福島県飯舘村など放射線量が高い被災地域から子どもたちを受け入れるなどの支援を行いました。

子どもたちを受入れた。ただ、原発事故と戦争、また国内と外国と事情が違うところが多いので、日本でどこまで支援できるか悩ましいところだ。一方で、松本大学ではウクライナの学生受け入れなど、どのような支援ができるか前向きに検討している。

松本市長時代には、主に2つの受け入れ事業に力を入れた。1つは福島県飯舘村の子どもたちを松本市内に1週間ほど招いた「信州松本こどもキャンプ」。2011年から2017年まで338人が松本市を訪れてくれた。これは、子どもたちが受ける放射線量とそれによる心理的なストレスから一時的にでも解放させたかったためだ。もともとベラルーシでは、高線量の被災地域の子どもたちを国内の保養所といった場所などを利用して一時的に滞在させていたことを知っていたため、これは松本市でもできるのではないかと考えた。

もう1つは、被災地の中学生を松本市に移住させるプロジェクト「まつもと子ども留学基金」を支援した。被災地の子どもたちが安心して生活し、遊び、勉強できる場所を提供しようという目的だった。子どもたちは市内に設けられた寮で生活し、地元の学校に通学した。中にはそのまま松本市内の高校、大学にまで進学した子どももいたほどだ。

(編集部注:松本市役所によれば、東日本大震災で被災地から松本市内に避難してきた人は2011年に117人。現在は176人、57世帯がそのまま松本市に滞在している。また、「まつもと子ども留学基金」を運営する「特定非営利活動法人まつもと子ども留学基金」によれば、これまで女性8人、男性2人が入寮し、松本市で過ごした。ここでは甲状腺などの医療検診も行った。)

 

善意のみに頼った支援では続かない

――こういった支援を行う際に、とくに重要なことは何でしょうか。

上述したプロジェクトは大きな成功を収めたと思っている。前者は松本市のプロジェクト、後者は松本市民の民間支援団体を中心としたプロジェクトだったが、何よりも、地元住民がとても手厚く、熱心に子どもたちを支援してくれたことが大きい。市役所の職員もがんばってくれたし、とくに後者の移住してきた子どもたちには、市の教育委員会が理解を示してくれ、通学する学校の先生や周辺住民などの支援も心強く、子どもたちをとてもかわいがってくれた。

すげのや・あきら 1943年生まれ。信州大学医学部卒。信州大学医学部助教授の時、チョルノービリ原発事故で放出された放射性物質による被害を受けた被災者、とくに小児甲状腺がんの治療を中心に医療支援に従事。1996年からはベラルーシ共和国に住みながら支援を続けた。2001年に帰国。長野県衛生部長を経て2004年に松本市長に初当選、以後4期16年務める。2020年から現職。『新版 チェルノブイリ診療記』『チェルノブイリいのちの記録』『子どもたちを放射能から守るために』など著書多数。(写真・福田恵介)

ウクライナから避難してきた人たちを受け入れることは、法律や言葉の問題もかかわってくる。国内では問題にならないが、国外からの避難者の場合、こうした問題をどうクリアしていくか。

ウクライナの現状から考えれば、誰もが何とかしてあげたいと思う。ただ、そのためには、行政機関(言語・財政・居住・就労などの支援)、医療機関(疾病やメンタル関連の支援)、教育・保育機関(子どもの学業・保育などの支援)、地域住民組織(日常生活の支援)など、広範な協力体制をしっかり構築することが不可欠だ。善意だけのボランティア活動では限度があり、長期にわたる受け入れには困難を来す可能性もあるだろう。

実は、2001年に支援活動の一環としてベラルーシの少年少女舞踊団を日本各地に招いた時、共に活動してくれた当時の高校生が、ポーランドで現在、避難民の受け入れ活動を熱心に行っている。当時の活動から感化された若者が避難民に手を差し伸べている姿を見て、これまでの支援活動が役に立っていることをうれしく思っている。

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