いうまでもなく、この時期のこの結果はコロナ禍の影響を受けている可能性が高い。実際、2020年9月前後で非連続的な変化が生じた後、残差はほぼ横ばい(価格設定行動は不変)で推移している。
日銀は2021年4月の展望レポートで「感染防止や混雑回避のための供給サイドでのコストの増加(検温・消毒の実施や座席数の削減等)」や「消費者の感染症への警戒感に起因する需要の価格弾力性の低下」が消費者物価の底堅さにつながっていると分析していた。
前者は公衆衛生上必要な措置が増えたことなど仕入価格判断DIでは測ることのできないコスト増があった可能性を示し、後者は数量ベースで売り上げを増やすことが困難(特売セールの減少など)であれば価格設定を強気化して収益を確保しようという企業の変化を示している。
強気の価格設定にはコロナ禍の要因が大きかった
今回の推計によると、コロナ禍の要因(コロナダミー)は「販売価格DI」を製造業で14.0%ポイント、非製造業で7.7%ポイント押し上げていることが示された。この影響を考慮してモデルを作り直すとグラフ③のようになる。
「販売価格判断DI」は仕入価格判断DIと国内需給判断DIの状況に対してフェアな水準であることがわかる。残差は小さく、「価格設定行動」は前向きになっていないのである。また、コロナ禍の影響がなければ、「販売価格判断DI」は直近でピークをつけた2018年頃に対して、製造業でやや上回り、非製造業では同程度の水準となる。総じて、足元で「企業の価格転嫁が進んでいる」と判断することはできない。
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