祖業との訣別を決めたパイオニアの覚悟 小谷進社長に聞く勝ち残りのシナリオ

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運転手や自動車の運転情報を蓄積すれば、どこでブレーキをかける場面が多いとか、この場所はどの時間帯が混むといった情報を事前に提供することも可能になる。これはADAS(先進運転支援システム)の時代には、より求められる技術となるだろう。

BtoB(法人向け)事業も強化する。今年1月から始めたのが、車載用通信端末を用いたタクシーや運送会社向けの運行管理システムだ。今でも大手は独自の運行管理システムを持っているが、タクシー業界や運送業界は圧倒的に中小企業が多い。そうした企業向けに我が社は汎用的なシステムを提供していく。

あえて主導権を握るつもりはない

小谷社長は事業拡大に向けて「M&Aも選択肢のひとつ」と述べた

――自動車市場では部品を組み合わせて提供するモジュール化が進み、サプライヤーも再編が相次いでいる。この流れにはどう対処するのか。

確かにモジュール化の流れで、今後コックピットをまとめて収めるビジネスも増えていくだろう。コックピットにはエアコンやメーターなど、さまさまな企業が携わっており、どこが主導権を握るのかは、まだ定まっていない。

そこであえて主導権を握るつもりはない。メーターやエアコンはやろうとしてもできない。われわれが手掛けるのは、あくまでナビゲーションやオーディオなどのエンターテインメントの領域だ。これまでは純正のカーナビやカーオーディオをティア1(1次サプライヤー)の企業として自動車メーカーに収めていた。今後はティア1としての仕事に加え、同じティア1のメガサプライヤーに対しても車載機器を供給する。

――中期経営計画では、新興国市場への挑戦も掲げている。これまでは最先端の製品をいち早く開発し、高価格で販売するビジネスモデルだった。安価な製品が中心の新興国にどのようにシフトしていくのか。

 すでに新興国でのビジネスを手掛けているが、確かに従来の購買層は高級車向けの車載機器が中心で、市場の大半を占める低価格品は手掛けてこなかった。今後は低価格帯の車載機器が確実に増えていく。だが今のパイオニアでは採算が合わない。新たな生産拠点やマーケティングの拠点を整える必要があり、M&A選択肢の一つとなる。

これまで重点地域としてやってきたのは中国、ブラジル、ロシア。今はインド、インドネシアにも力を入れている。これからはメキシコ市場にも力を入れていく。

(撮影:尾形文繁)

(「週刊東洋経済1月17日号」(1月13日発売)「この人に聞く」に加筆
 

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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