車載ビジネスに特化、パイオニア最後の賭け 経営資源の一点集中で復活なるか

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今回の事業売却で移籍の対象でない1500人は人員削減の対象になる見通し。写真はパイオニア本社

「ホームAVとDJ機器は継続的な投資が必要。成長のため、カーエレクトロニクスに集中させる決断をした」──。

パイオニアの小谷進社長がこう宣言してから1カ月。売却先であるオンキヨーとの最終契約のタイミングとなる10月末に向け、譲渡額の調整が大詰めを迎えている。 具体的にはスピーカーやDVDプレーヤーなどを音響機器中堅のオンキヨーに、クラブで使われるDJ機器は米投資ファンドに売却。移籍を含め計約2200人を削減する見通しだ。これが決まれば、カーナビゲーションなど車載事業に特化した企業になる。

2000年代を振り返ると、まさに栄光と挫折の10年間だった。象徴といえる事業が、1990年代後半から投資を加速させたプラズマテレビだ。今回の発表で、ようやくプラズマ投資のツケを払い終えたことになる。

かつての”オーディオ御三家”

昭和の高度成長期、山水電気、トリオ(現JVCケンウッド)とともに“オーディオ御三家”として、家庭用の音響機器の普及を支えたパイオニアは、その名のとおり「開拓者」として、音響分野を皮切りに新製品を出し続けた。60年代にはカーステレオ事業に参入。後に音から映像へと事業拡大を目指し、世界初のレーザーディスク(LD)プレーヤーを発売する。

当時、一世を風靡したのがレーザーカラオケだった。パイオニア製のLDプレーヤーは高級クラブやカラオケボックス向けに売れに売れた。ブーム一巡後はカーナビやDVDなどに資源を投入。カーナビは90年、世界で初めて商品化している。光ディスクの技術で先行していたことから、特許収入を潤沢に得るなど、電機メーカーとしてはまさに理想的なビジネスモデルだった。

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