関関同立の大学生が「壊れるまで」バイトする事情 母も祖母も高卒で「大学に行く」感覚がなかった

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勉強が好きで成績優秀だった真帆さんが、経済的に困窮してしまったのはなぜなのでしょうか(写真:真帆さん提供)
この連載では、女性、とくに単身女性と母子家庭の貧困問題を考えるため、「総論」ではなく「個人の物語」に焦点を当てて紹介している。個々の生活をつぶさに見ることによって、真実がわかると考えているからだ。
今回紹介するのは、「私の家は母子家庭で祖母と母と弟、私で暮らしていましたが、祖母からいわゆる孫差別を受けて虐待を受け、母の再婚相手に会わされてはご機嫌を取る生活をしていました」とメールをくれた22歳の女性だ。

母親に大学進学を反対された

関西在住、関関同立に通う現役女子大生佐々木真帆さん(仮名、22歳)からメールをもらった。「生活費、学費は自分で払っています。奨学金は辞退して、一人暮らしを始めてより生活が厳しくなりました。精神的に持ち崩してしまって仕事に行けていません」という。

真帆さんは勉強好きの優等生で、本名を検索すると高校時代に学業で表彰された情報が出てきた。上位進学高校から現役で進学している。

オンラインでつながると、一人暮らしの部屋と真帆さんが映る。図書館にいそうな見るからにまじめそうな学生で、実際の性格も社交的ではないという。真帆さんは半年前から「大学を続けるために」夜の仕事に従事していたが、精神的な異変を感じて先日その仕事を辞めている。しばらく気丈に現状を語っていたが、開始から40分経過あたりから抑えていた感情がせき(堰)を切った。肩を震わせて泣いてしまった。

「本当は全然、平気じゃないです。人にはたぶん、大丈夫そうに見えるだろうなってことは理解しています。人と対面しているときは大丈夫というか、大丈夫そうにできる。でも一人になったら、感情を抑えられなくてめっちゃ泣いたり、どうして私ばかり、ここまでやらなきゃならないんだろうって……いつもそう思っているし、いまも思っています」

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高校の成績はつねに学年3番以内だったが、母親に大学進学を反対されている。子どもの頃からどうしても勉強したいことがあり、彼女にとって進学しない選択はありえなかった。学費はすべて自分が払う、迷惑をかけないという約束をして進学。大学2年生から一人暮らし。親族が所有する部屋で家賃がかからないことが救いだが、学費と生活費はすべて自分で必死で稼いできた。

「奨学金は最初の1年間借りました。年間で150万円くらいになって、あまりに大きな金額で不安になってやめました。返せる想像がつきません。いままで家族のことでしんどい思いして、大学生になってからは経済的に苦しい。ただ勉強したいだけなのに、本当に苦しい」

ただただ勉強がしたいだけの優等生に、いったいなにが降りかかっているのか聞いていく。

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