中国が「対台湾武力行使」を簡単には起こせない訳 ウクライナの反撃、ロシア経済制裁を目撃した今

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1949年から1970年代まで、国共内戦の延長戦が続いており、台湾海峡は文字どおり戦場であった。中国は「台湾解放」を、台湾は「大陸反攻」を唱えていた。1950年代に中国は沿岸島嶼に攻勢をかけた。他方で台湾は離島を拠点とし、小規模ながらも、中国大陸を爆撃したり、上陸作戦をしたり、海上突撃をしたり、奥地の遊撃隊に武装蜂起させたりしていた。砲撃戦、空中戦、海戦がしばしば起こり、パイロット亡命事件が起こり、スパイが捕まっていた。

ところが、中国は1979年元日をもって金門島への砲撃停止を宣言し、1981年9月に正式に「平和統一政策」を宣言した。台湾は、1991年に李登輝総統が内戦状態の終結を宣言したが、中国は「敵対状態」が継続しているという解釈を取っている。

中台間の戦争状態は法的に終わっていない

つまり、1979年以来武力行使はなされなくなったが、まだ中台間の戦争状態は法的には終結していない。中国は「政策」として「平和統一」を宣言することで、台湾海峡を含む中国の沿海地域と隣接する海上交通路に事実上の平和をもたらしたのである。この平和的環境抜きに、中国が改革・開放政策に踏み切ることは不可能だった。

中国が「平和統一政策」を軽々に撤回して武力統一に転換できないのは、こうした歴史的経緯の重みのためである。ただし、法律上中国の「平和統一政策」は、「台湾を中国から分裂させるという事実」が引き起こされた時などいくつかの条件で、「非平和的手段」(一般には武力行使を含むと解釈されている)を取れることが定められている(「反国家分裂法」第8条)。ただし、注意すべきなのは、「武力行使」や「武力による威嚇」は、あくまでも台湾の独立阻止が目的であって、「武力統一」が目的ではない。両者はまったく別物である。

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