池上彰、親が思う"いい会社"が要注意である理由 「18歳成年時代」に親も知っておきたい新常識

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人に喜んでもらえて自分の生活が成り立つ、そんな意味のある仕事をこれから大人になっていく子どもたちがちゃんと見つけられればもちろんこのうえないのですが、親である以上、自分の子がいざ働くという局面になった際、“大人の先輩”として自分自身の経験を説得力を持って伝えるためにも、まずは私たち親自身が「働く理由」についてしっかりと振り返っておく必要があるでしょう。

そもそも「いい会社」とは?

ところで、「いい会社」と聞いて、どんな会社をイメージするでしょうか。親なら、子どもに「将来いい会社に入れるといいけれど」などと言ったおぼえがある方は少なくないはずです。でも、よく言う「いい会社」とはいったいどんな会社なのか。給料をたくさんもらえる会社でしょうか、それとも誰もが知っている有名企業でしょうか。

まず、給料が高い会社は時代によって違ってきますし、人気のある会社も同様です。例えば、第2次世界大戦が終った頃には石炭関連の会社が人気でした。当時、石炭は「黒いダイヤ」と呼ばれ、産業の発展になくてはならないものだったからです。

数十年前には、多くの人が銀行に入りたがりました。しかし、厳しい経営に直面し、リストラに踏み切るところも増えました。また、旅行会社や航空会社なども人気でしたが、新型コロナの影響で国内外の移動が制限されたりしたこともあり、旅行・航空業界は大きな危機に立たされました。

どの時代も、そのときに業績が好調で名の知れている会社が人気にはなるものの、そうした会社の人気は永遠に続くわけではない。だからこそ、大人になったときに働きたい会社について子どもと話すような機会には、「人気があるかどうか」という視点に親自身が偏りすぎないようにしなければなりません。

大事なのは、これから大人になっていく子ども自身が、憧れる仕事を「かっこいい」「面白そう」と思えるかどうか。「高給取りのお金持ちなる」という夢ももちろん悪くはないのですが、「何になるか」よりも「何をするか」をちゃんと考えさせること、それこそが子どもの将来にとって必ず重要になる。これまで働いてきた大人なら、それが本当に大事なことだというのはわかっているはずです。

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