池上彰、親が思う"いい会社"が要注意である理由 「18歳成年時代」に親も知っておきたい新常識

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「ワーク・ライフ・バランス」を本当に理解しているか?

ここ最近で、だいぶ世に広まった感のある「ワーク・ライフ・バランス」の考え方。仕事と生活のバランスをとる生き方を指すのはご存じのとおりです。たしかに、生活を支え、生きがいややりがいも感じられる仕事に就いたのはいいものの、仕事に打ち込むあまり心身の健康を損なって人生を楽しめなかったりしたらもったいないことですし、「働くだけが人生じゃない」という観点からも大事な考え方でしょう。

アメリカなどほかの先進国に比べ、日本は労働生産性がだいぶ低いといわれています。労働生産性とは、1人ひとりがどれだけ効率よく働いて富や成果を生み出しているかを示す指標ですが、多くの時間を使い、身を粉にして働いても、それが仕事の結果に結びついていないとしたら悲惨なことです。

ワーク・ライフ・バランスは「仕事をほどほどに」というものではありません。やりがいや充足感を感じながら働いて仕事の責任を果たし、そのうえで健康的で豊かな生活を送るための時間も確保するという考え方です。大人に近づいていく子どもに、働くうえで見失ってはいけない新しい考え方を、親自身が意識しているか。これからの親の役目としてそれを教えることも大事だろうと思います。

最近では、仕事と生活の境界線をなくす「ワーク・ライフ・インテグレーション」という考え方にも注目が集まっています。仕事も生活も同じ人生の一部、そうとらえて柔軟に働くことで人生をより豊かにしようという考え方です。

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テレワークが一般化してきている今、このワーク・ライフ・インテグレーションも前述のワーク・ライフ・バランスも、まさに時代に即した考え方かもしれませんが、「働くだけが人生ではない」という観点がまだ一般的ではない時代に大人になった親世代は、今の子どもたちはそうした新しい考え方を常識とする世の中を生きていくのだということを、今一度、柔軟に意識しておく必要があるでしょう。

以上この記事では、これから大人になる子どもたちが「今の世の中を生きていくために知っておくべきこと」のうち、「仕事」に関するトピックスをざっと解説しました。

私たち大人にとってはいわば「当然のこと」かもしれませんが、振り返ってみれば、定年まで1つの職場で働き続けることを理想とする時代はすでに過ぎ去り、すっかり一般化した「転職」はもちろん、「副業」を認める会社もどんどん増えてきています。「仕事」の周辺は、新しい常識にとって代わられてきているのです。

大人として、そして親としてあらためて把握しておくべき「仕事」の常識。私たちより2年も早く大人になる子どもたちに、働くことの意味と常識を“早めに”伝えていく。それこそが、今どきの親としての“ニューノーマル”なのではないでしょうか。

池上 彰 ジャーナリスト

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いけがみ あきら / Akira Ikegami

1950年、長野県生まれ。1973年慶応義塾大学卒業後NHK入局。ロッキード事件、日航ジャンボ機墜落事故など取材経験を重ね、後にキャスターも担当。1994~2005年「週刊こどもニュース」でお父さん役を務めた。2005年より、フリージャーナリストとして多方面で活躍中。東京工業大学リベラルアーツセンター教授を経て、現在、東京工業大学特命教授。名城大学教授。2013年、第5回伊丹十三賞受賞。2016年、第64回菊池寛賞受賞(テレビ東京選挙特番チームと共同受賞)。著書に『伝える力』 (PHPビジネス新書)、『おとなの教養』(NHK出版新書)、『そうだったのか!現代史』(集英社文庫)、『世界を動かす巨人たち〈政治家編〉』(集英社新書)など。

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