北陸新幹線「かがやき素通り」小規模駅の生きる道 開業7年の沿線関係者「2年後延伸」の敦賀も連携

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さらに興味深いデータを成川氏は示した。地元高校の卒業生の進路の変化だ。北陸新幹線開業前の2012~2014年と、開業後の2018~2020年を比較すると、開業前の進学先は絶対数で「関東>富山>関西>石川」の順だったが、開業後は「石川>富山>関東>関西」の順になった。

石川県や富山県内へ進学する生徒が増えた反面、関東や関西に進学する生徒が減った。とくに、関西へ進学する生徒は半減しており、北陸新幹線が地元と関西とのつながりを弱めた一面がうかがえる。

もちろん、コロナ禍の影響も大きいとみられるが、成川氏は「市の通学支援補助を見ても、富山・金沢まで通う学生が増えた。自宅から通える、もしくは地元から近い地域が選ばれるようになった」とみる。

このほか、金沢大学から医師派遣を受けている黒部市民病院への聞き取り結果も興味深い内容だった。開業前、打ち合わせは病院側が大学まで出向いていたのに対し、開業後は大学の教授が病院を訪れるようになったこと、市の人口が開業から3年は転入超過だったにもかかわらず、4年目は転出超過に転じたことなどを、成川氏は報告した。

「失敗から学ぶことがある。私たちは膨大なエネルギーを使って『観光客を呼ぶこと』や『おもてなし』に力を注いだ。しかし最近、ようやく、『自分たちの生活がどう変わったのか』に意識が向くようになった。市民の生活が5年後、10年後、どう変わっていくかのビジョンを示せないといけない。敦賀の皆さん、開業まで2年。黒部の二の舞にならないよう」。成川氏は、敦賀市へこんなエールを送った。

「開業5年後までをイメージ」

高岡市の西田氏は、在来線の高岡駅と新高岡駅の双方に、市が大きな投資を振り向けた結果、財政難に陥った経緯などを市民の立場から検討した。

新高岡駅周辺の地価は、高岡駅周辺を上回っている=2019年9月(筆者撮影)

また、開業前の2012年と開業年の2015年、そして2021年の地価を比較し、新高岡駅前が「9万6000円-9万9000円-9万9200円」と上昇傾向にある一方、高岡駅前が「12万5000円-11万2000円-9万2500円」と下がり、地価が逆転したことなどを報告した。さらに、敦賀市には「このままだと敦賀駅は単なる乗換駅になりかねない。新幹線の乗客を改札の外へどう出すかがカギ。そして、開業後には(財政面の)余力を残しておく必要がある」と助言した。

北海道からのアドバイスもあった。オンライン参加した函館市の永澤大樹・青森大学客員研究員は、10年携わった新幹線開業対策を振り返り「開業までの2年はあっという間。(対策を)やればやった分の手応えはあるはず。ただ、生まれた経済波及効果やマインドをどう持続させるか、地域内の循環をどうつくるかがポイント。開業2年前から開業5年後の期間、『地域に残るリソースは何か』をイメージしていってはどうか」と提起した。

終了後、強いインパクトを感じたのは、コロナ禍がもたらした「新たな連携の形と可能性」だった。

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