「まちづくりのうえでは7年なんてあっという間。『もう7年』じゃなく、『まだ7年』なんです。なのに、地域の人たちの関心が薄れて、新幹線のポテンシャルをどう生かすかという議論がなくなってしまう。しかも、沿線のプレーヤーが個別に、狭い世界と狭い視野で悩みがち。開通済みの地域がもっと積極的につながって、互いの視点や情報を交換し合えば、行政によるまちづくりも、ビジネスパーソンの経済活動も活発化するんじゃないでしょうか。新たに延伸する地域へのヒントも生まれるはず」。平原氏は見通す。
活動のスタートとして、連絡会議は3月14日の金沢開業7周年に合わせ、直前の土曜日の12日にフォーラムを企画した。フルサット内に加え、新幹線敦賀開業まちづくり推進会議と連携して、敦賀駅前の交流施設オルパークにパブリック・ビューイングの会場を設定。一方、Zoomにオンライン会場を設定してハイブリッド型のフォーラムを構成した。
「沿線で何らかの活動を続けている人・組織」という観点から、共同代表らのつながりで、報告は地域連携DMO信州いいやま観光局(長野県飯山市)の高野賢一次長、上越市の平原氏、NPO法人黒部まちづくり協議会(富山県黒部市)の成川正幸事務局長、不動産会社・オフィスかんざいの西田靖夫代表(富山県高岡市)が行った。また、新幹線敦賀開業まちづくり推進会議のメンバーらが、現地の開業対策を伝えて助言を求めた。
「自ら地域を楽しむ人が増えた」
沿線からの「生の声」は示唆に富んでいた。信州いいやま観光局の高野次長の報告で最も印象的だったのは、次の言葉だ。
「新幹線開業を通じて、連携の軸、地域を見直す機会が生まれ、地域づくりの取り組みが進んでいる。飯山は豪雪地で、地域の将来を悲観し、子どもたちにもネガティブなことを言う人も多かった。しかし、自ら地域を楽しむ人が増えた。子どもに『この地域は最高だろう』と。新幹線は大きな転換点、大きなハード事業だが、大切なのはそこから先。地域を持続可能なものにするには、人という資源を育てていくことが大事」
黒部まちづくり協議会の成川氏は、黒部峡谷鉄道で29年間、運転士や整備士、営業企画などを経験し、現在は市議会議員を務める。協議会は開業対策としてワークショップを重ね、1日500円で公共交通網を利用できる「黒部ワンコイン・プロジェクト」を2006年に発案、実施するなどの実践を展開してきた。成川氏の報告は、ほかの新幹線開業地で、少なくとも筆者は見聞したことのない奥行きと広がりがあった。
1日当たりの黒部市への入込者や主要4観光地の客数、宿泊者数は、2015年3月の新幹線開業を契機に増加していたという。だが、宇奈月温泉の宿泊者を対象にした調査の結果、開業前の2014年度に17%だった「JR・電車」の利用者数は、開業の2015年度に26%まで上昇したにもかかわらず、開業5年目の2019年度には、宿泊者数が微減した状態ながら、「JR・電車」利用者のシェアが17%まで落ちた。
さらに、2014年度の宿泊者シェアは、北陸3県が25%、関東が26%だったのに対し、2015年度は北陸が20%、関東31%と伸びたが、2019年度には北陸34%、関東21%と、新幹線開業以前よりも関東のシェアが下がり、地元利用が増えていたという。
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