「怒りが爆発しそうな人」が真っ先にやるべき行動 元自衛隊「メンタル教官」が解説

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大切なのは「受け身」で怒りのピークをやり過ごして、現実的なトラブルやエスカレーションの発生をひとまず防ぐことです。夫婦喧嘩が始まったら、反論したい気持ちをぐっとこらえて違う部屋に移動することです。それが大きな衝突へとエスカレーションすることを防いでくれます。

イライラしやすいなと思ったら、すぐにするべきこと

また、私がイライラ・怒りの対処法として重視しているのが、「疲労のケア」です。普段、温厚な人でも、疲れがたまってくるとイライラします。逆にいえば、怒りっぽいと思われている人も、元気で余裕があるときは穏やかなこともあり、いつも怒っているわけではありません。

先にも述べたように「怒りは自分を守ろうとする強い感情」です。だから、疲れて弱っているときは、弱っている自分を守ろうとして、余計に周囲を警戒して、ピリピリとするのです。普段だったら、カチンと来ない一言にも反応してしまいます。

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つまり、イライラは「性格」の問題ではなく「疲労」の問題なのです。イライラや疲れていることの、最もわかりやすい特徴です。だから、最近、イライラしているなと思ったら、とにかく疲労のケアに努めます。具体的には、いつもより1時間長く寝るようにする、週末は予定を入れずにゴロゴロとして体を休める、消化に良い物を食べて内臓も休ませる、といったことです。

ランニングするとすっきりする、ゴルフが趣味、という人もいるとは思いますが、疲れているときに「動的」なストレス解消法はお勧めしません。スポーツで余計に疲れることも、よくあるからです。

カチンと来たらその場を離れる、最近、イライラしているなと思ったら、とにかく休む。怒りの感情は強力で、本当におさまるには実はかなり時間がかかるのですが、まずはこの二つを実践するだけで、穏やかな生活にかなり近づけると思います。ぜひ、実践してみてください。

(取材/構成 向山奈央子)

下園 壮太 メンタルレスキュー協会理事長、元・陸上自衛隊衛生学校心理教官

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しもぞの そうた / Sota Shimozono

1959年生まれ。82年防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊入隊。陸上自衛隊初の心理幹部として多くのカウンセリングを手がける。大事故や自殺問題への支援で得た経験をもとに独自の理論を展開。陸上自衛隊衛生学校で、衛生科隊員(医師など)に対する教育に携わってきた。2015年に退官。現在は、NPO法人メンタルレスキュー協会理事長を務める傍ら、講演や研修会で、独自のカウンセリング技術を普及。著書は『うつからの脱出』(朝日文庫)、『心を守る ストレスケア』(池田書店)など多数。

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